研究課題/領域番号 |
23310192
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
矢野 恵美 琉球大学, 法務研究科, 准教授 (80400472)
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研究分担者 |
森川 恭剛 琉球大学, 法文学部, 教授 (20274417)
武田 昌則 琉球大学, 法務研究科, 教授 (60404547)
小名木 明宏 北海道大学, 法学研究科, 教授 (60274685)
上瀬 由美子 立正大学, 心理学部, 教授 (20256473)
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キーワード | 北欧 / 受刑者処遇 / ジェンダー / DV / 改善指導 / スウェーデン / フィンランド / ノルウェー |
研究概要 |
本研究では、刑務所処遇の中でも男女の違いが表われている刑務作業と改善指導、職員の性別、社会復帰等について取り上げ、国際比較をしながら、「犯罪者処遇をジェンダーの視点から見直す」ことを目的としている。国際比較にあたり、まず、各国で、そもそも「刑罰」をどう捉えているのか、そこに男女差はあるのか、また、受刑者が社会復帰する際の社会における差別はどうなっているのか、そこに男女差はあるのかといった点も調査する。研究チームは(1)主に国際比較を行う海外調査班と、(2)日本国内に関してジェンダーの視点から受刑者処遇を考える国内調査班(質問紙調査を含む)から成っており、海外の研究協力者を含んでいる。 今年度は、まず、日本国内のメンバー(研究分担者、連携研究者、研究協力者)で会合を実施し、そもそもの問題意識、各自の調査内容、今年度の活動内容、3年間での研究目的等につき、全員で議論し、意見を共有した。これにより、今後3年間に向けて、全員が方向性をつかむとともに、各自の役割を理解することができた。その他、 (1)海外調査班では、(1)ジェンダー問題先進諸国である北欧のうち、ノルウェー、フィンランドにおいて、女子刑務所を含む処遇プログラムの内容、男性の処遇にジェンダーの視点を取り入れるべき犯罪であるDV加害者の処遇、刑罰に対する考え方等につきインタビュー調査を実施した。社会におけるジェンダー意識と施設内処遇には大きな関係があること、刑罰意識と関係して施設内処遇のやり方が異なり、それが男女の処遇の違いにも表れるという知見が得られた。オスロ大学において、日本の刑罰意識、処遇プログラムに関する講演を行い(矢野恵美・齋藤実:連携研究者)、意見交換を行った。(2)ハワイにおける処遇プログラム、刑罰に対する考え方、ジェンダー犯罪学に関するインタビュー調査を実施した。アメリカはジェンダー犯罪学先進国であり、研究分野においてジェンダーの視点から見た受刑者処遇の研究があり、ハワイ大学研究者と共同研究の可能性も模索することとなった。(3)韓国の研究協力者及びフィンランドの犯罪学者を招聘し、琉球大学において国際セミナーを開催した。韓国は日本同様性別役割分担意識が根強く、日本と共通の課題があること、(1)同様、北欧においてはそもそも刑罰に対する考え方が大きく異なり、ジェンダーを含む社会背景から研究を進める必要があることが明らかになった。 (4)ノルウェー王国大使館の協力を得て、ノルウェー法務・警察省から実務家を招聘し、刑罰の考え方についての国際セミナーを開催した。ここでも、そもそも刑罰に対する考え方が大きく異なり、ジェンダーを含む社会背景から研究を進める必要があることが明らかになった。 (2)国内調査班では、(1)国内の施設において、刑罰に関する考え方、男女の処遇に関する違いに関する意見交換を実施した。日本においては刑罰に関して応報意識が強く、保安を重視してきた。そのことは世界的に見ても非常に高水準の安全性が保たれていることが確認された。女性施設においては職員自身の状況にジェンダーの視点からの配慮が重要であることが明らかとなった。(2)研究協力者と打ち合わせを重ね、女子を含む国内施設において、調査票調査を実施した。分析は24年度に実施する。 上記の知見に関係し、学会報告などを実施し、意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国内調査においては、質問紙調査に関して、平成23年度は準備期間、平成24年度に実施としており、当初の予定施設においては上記の通りに進行しているが、予定していた以外の施設でも実施が可能となり、調査を平成23年度中に実施することができたため。海外調査において、ノルウェー王国大使館の協力により、平成23年度にも国際セミナーを実施することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)海外調査については、引き続き各国調査を進める。その際に、ジェンダーを含む社会背景から刑罰に関する考え方を調査し、それが処遇に及ぼしている影響に配慮しながら調査を進める。ジェンダー犯罪学の研究者との共同研究も模索する。 (2)国内調査については引き続き、国内施設において、刑罰に関する考え方、男女の処遇に関する違いに関する意見交換を実施する。調査票調査については実施済みのものについては分析を行い、さらに新しい調査を実施する。北欧で実施されている同種の調査との比較を行う。 国際セミナーについても引き続き開催し、意見交換を続ける。知見に基づく学会報告も重ねいそこで得られた内容から研究を発展させ、最終的にはこれらの結果につき、実務への提言を行っていく。
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