研究課題/領域番号 |
23320002
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
柴田 正良 金沢大学, 人間科学系, 教授 (20201543)
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研究分担者 |
大平 英樹 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90221837)
橋本 敬 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 教授 (90313709)
金野 武司 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 研究員 (50537058)
長滝 祥司 中京大学, 国際教養学部, 教授 (40288436)
柏端 達也 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (80263193)
三浦 俊彦 和洋女子大学, 言語文学系, 教授 (10219587)
服部 裕幸 南山大学, 人文学部, 教授 (40110754)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 共同注意 / 認知ロボティクス / 意図的主体性 / ロボット的身体 / 認知科学 / 心の理論 / 意図の情動性 / 哲学 |
研究概要 |
われわれの事業期間全体である4年間の計画では、平成25年度に第二レベル、26年度に第三レベルのロボットの制作を行うこととしている。平成24年度は、その準備段階の一つとして、既存の第一レベル・ロボットに組み込むべき要因としての「情動」の役割を検討し、また「共同注意」そのものとその神経基盤に関する最新の情報を得ることにより、第二レベル・ロボット作成の大きな手がかりを手にすることができた。また、第二レベル・ロボットのパフォーマンスの検証手段として視線対象のインタラクティブな相互確認が有効であることから、意図の重層的な理解の初次段階としての、ヒト同士の視線計測に関する予備的実験も行った。 第一レベル・ロボットに対する「情動」の組み込みは、いわゆるヒト本来の情動によることは難しく、実験参加者の情動パターンと視線対象との「対」を利用した、ロボット内部のカテゴリー分類機構として実現するほかはない。この点で、われわれは、共同注意現象に関する一層詳細な心理学的、および神経学的な知見が必要になったが、これに関しては、平成24年8月の別府哲教授(岐阜大学)による「自閉症と共同注意:心の理解」、および平成25年2月の田邊宏樹准教授(名古屋大学)による「脳機能イメージングによる見つめ合いと共同注意の神経基盤」という2つの講演を通して、大きく前進することができた。 意図理解を可能とする内部構造のゆえにロボットがヒトとの重層的な意図帰属を促す、というわれわれの仮説が正しいとすれば、その検証には、ヒトとロボットとのより肌理の細かい視線のやり取りがエビデンスとして記録されねばならない。その検証を確固とするために、金野グループは、ヒトとヒトとの<重層的な意図の読み合い>の際の視線動作を、基礎データとして集積する実験に着手した。それも今年度の大きな一歩であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この計画の最も重要な点は、「他者の意図を理解する」という要素、および「他者と意図を共有する」という要素を、それなりの仕方でロボット上に実現することである。 そのために第一レベルのロボットを超えて、第二レベルのロボット制作に至る道が、ロボット内部の認知機構に「情動」の要因を組み込むことであることが確認できたこと、また、そのパフォーマンス・レベルの検証に、ヒト同士に関する視線計測を通した<意図の重層的帰属>の基礎データが有効であることが判明し、それに関する予備実験も開始できこと、その二つの実現によって、われわれは自分たちの現在の達成度を、②「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
われわれは今年度の8月に、「情動」要素を組み込んだ第二レベル・ロボットの成果を国際認知学会(ベルリン開催)で発表する予定である。このロボットが、実際のパフォーマンスとしてどの程度の<意図の重層的帰属>を共同注意現象において実現できるかにもかかっているが、今後は、(1)このロボットの検証と改良を通じて、他者の意図理解によって自らの行動を修正する第三レベルのロボットを作成する道筋をつけ、(2)より普遍的な現象としての「共同注意」および「相互的意図帰属」を、ロボット作成と哲学的概念分析の往還的作業によって解明することを目指していく。
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