本研究は、1990年代の中頃にアフガニスタンのバーミヤーン渓谷およびパキスタン東部のギルギットから新たに発見され、世界各地の研究機関および個人コレクションに引き取られた大量のインド語仏教写本類について、海外の研究協力者と共に解読研究を継続的に行い、その研究成果として得られる仏教文献のサンスクリット語およびガンダーラ語テキストと翻訳の出版を目指すものである。平成27年度は研究の最終年度であったが、未解読のまま残されていたカローシュティー文字とブラーフミー文字で書写されたガンダーラ語とサンスクリット語の大乗経典写本類の解読と同定作業、さらにブラーフミー文字で書写されたサンスクリット語の『長阿含経』写本を中心とする教団文献類の解読を継続して行った。(1)まずノルウェーのスコイエン・コレクションおよび我が国の平山郁夫コレクションに含まれる、カローシュティー文字によるガンダーラ語写本とブラーフミー文字によるサンスクリット語写本類について、海外の研究協力者と共に解読作業を継続して行った。(2)平山郁夫コレクションおよび米国のアダムス・コレクションに所蔵される、説一切有部教団が伝承した、パキスタンのギルギット出土と伝えられるサンスクリット語の『長阿含経』写本の解読研究を前年度に引き続いて行った。平成27年度は、長阿含経』第3篇の第1経である『トリダンディ経』の梵文校訂テキスト作成を他文献との比較対照の上で行った。(3)さらに、ノルウェーのスコイエン・コレクションについて、海外の研究協力者と共に1週間、オスロにおいて現地調査を行い、これまで未入手であった写本の画像スキャンデータを取ると共に、既入手の画像データのうち不鮮明なものについては改めてデータを取り、スコイエン・コレクションの仏教写本第4巻刊行の準備を終えた。
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