研究課題/領域番号 |
23320016
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研究機関 | 石川県立看護大学 |
研究代表者 |
浅見 洋 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (00132598)
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研究分担者 |
中村 順子 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30469423)
伊藤 智子 島根県立大学, 看護学部, 准教授 (70413490)
諸岡 了介 島根大学, 教育学部, 准教授 (90466516)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 宗教と医療 / ルーラル / 死生観 / 終末期療養場所 |
研究概要 |
平成23年度に高齢化率が進んだ日本海側の過疎地域3箇所(石川県白山麓地域、島根県江津地域、秋田県阿仁地域)で死生観と終末期療養に関する意識調査を横断的に実施した。平成24年度は3地域各々の調査結果を集計、分析した。平成25年度は石川、秋田、島根の調査結果を石川看護雑誌、秋田大学大学院医学系研究科保健学研究紀要、島根県立大学出雲キャンパス紀要で公表した。また、日本ルーラルナーシング学会、国際老年学会(ソウル)などでその調査結果を発表した。さらに、研究代表者は3県を総合した調査結果や石川県の調査結果を地域医療や福祉関係の講演会、研修会に活用した。 3地域を総合した調査結果は回収率41.4%であり、「自分が療養したい場所」は自宅37.7%、ホスピス・緩和ケア病棟31.6%、一般病棟13.0%、福祉施設4.3%、その他13.4%、「家族を療養させたい場所」は自宅33.9%、ホスピス・緩和ケア病棟29.9%、一般病棟14.3%、福祉施設6.6%、その他15.3%である。ホスピス・緩和ケア病棟と病院一般病棟を併せると、「自分が療養したい場所」、「家族を療養させたい場所」ともに「自宅」希望を上回った。この研究結果は他の類似調査には見られない新たな研究結果であり、ルーラルで暮らす人々の死生観と終末期療養希望の変容を示唆している。それは今後のルーラルエリアにおける新たな終末期療養のあり方に考察するための一助となると考える。 ルーラルエリア3地域の調査研究と並行して、25年度はドイツの終末期医療の現場、特にホスピスと高齢者施設の現状視察を実施した。その結果、ドイツにおいては終末期療養、看取りの場は自宅、ないしはその代替である高齢者施設の希望が高く、その希望は近年より高まりつつあることが推測された。こうした日独の対照的な現状は双方の死生観と医療福祉政策に起因するものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度までに、当初の計画通り石川、秋田、島根3地域での死生観と終末期療養に関する横断的調査を終え、各地域の研究結果と3地区総合の研究結果をすべて順調に論文発表、口頭発表で公表することができた。また、それらの調査結果をさまざまな講演会や医療福祉関係者の研修会の資料として活用することができ、今後の地域における高齢者医療、終末期医療を考える際の資料として提供することができた。さらに、3地域の横断的研究結果は地方紙で新聞報道(北國新聞、平成26年1月29日)がされた後、3つの医療福祉関係の「切り抜き速報」にも掲載され、全国に紹介された。 本研究の一端であるドイツの終末期医療の、特に在宅ホスピス、緩和ケア、高齢者施設の現状視察の結果報告とそれに基づく日独の死生観と終末期療養やスピリチュアルケアの比較検討も成果報告ができ、医療、福祉関連の講演会、研修会などで公表する機会も何度か与えられた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は23年度の調査票等を再検討したうえで、秋田、島根の2地域で死生観と終末期療養ニーズに関する意識調査を実施する。それによって両地域における3年間の経時的変容をそれぞれの地域で確認し、結果を順調に整理することができれば、学会等で研究発表を行う。平成27年度は両地区の経時的な調査結果の分析をさらに進め、成果報告書としてまとめる。また、石川県では平成26年度に新たに「団塊世代における死生観と終末期療養ニーズ」に関する聞き取り調査を実施する予定である。 平成26年度は研究代表者が3ヶ月ほどドイツのライプチヒに滞在し、当地でドイツにおける死生観、終末期療養の視察調査を実施し、日独の死生観と終末期療養ニーズの比較文化的な研究をも併せて実施する予定である。 また、26年度当初(4月末から5月初旬)には現在ドイツでもっとも生産的なゼールゾルゲガー(Seelsorger)であり、スピリチュアルケアに造詣が深いフライブルク福音主義単科大学ケルスティン・ラマー博士を招聘し、ドイツの死生観と終末期療養ニーズ、スピリチュアルケア、グリーフケアに関する講演行うと同時に、本研究を進展、還元するために「死生観とケア」公開研究会を2回開催する予定である。
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