研究課題/領域番号 |
23320017
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
武内 房司 学習院大学, 文学部, 教授 (30179618)
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研究分担者 |
今井 昭夫 東京外国語大学, その他部局等, 教授 (20203284)
胎中 千鶴 目白大学, 外国語学部, 教授 (30550818)
孫 江 静岡文化芸術大学, 人文・社会学部, 教授 (40329529)
趙 景達 千葉大学, 文学部, 教授 (70188499)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 中国 / 台湾 / 海外資料調査 / 台湾 / アメリカ / フランス |
研究概要 |
本年度の活動の中心は,10月20日・21日の両日にわたって「災害と近代東アジアの民衆宗教」をテーマとして開催されたワークショップである。本ワークショップにおいては,台湾・中国より専門研究者を招聘し,以下の報告を得た。范純武(台湾・仏光大学人文学院歴史学系)「道義~1940 年代「中教道義会」与上海社会救済」,曹新宇(中国人民大学清史研究所)「中国歴史上的“災難信仰制度”与民間教門的“災難神話”」,王見川(台湾・南台科技大学通識教育中心)「晚清災難下扶乩團體的慈善活動~兼談中國紅十字會的起源」,篠崎守利(流通経済大学)「民国初年の紅十字会標章問題」,武内房司「日本人は在理教をどう見たか~中国近代の民衆宗教をめぐる一試論」。これらの5名の研究報告及び討論をつうじて,戦争・災害時において民衆宗教の果たした役割,民衆宗教の災害観,近代慈善事業の諸性格等をめぐって活発な議論が交わされた。 また,研究協力者を含むプロジェクトメンバーにより,関係者へのインタビューを含む以下の海外調査が実施された。(1)パリ外国宣教会図書館所蔵「聖嬰会」関係資料調査(牧野元紀,2012年12月13日~12月22日),(2)台湾国家図書館・台湾大学図書館所蔵民衆宗教関係調査(宮田義矢,2013年3月3日~3月9日),(3)カルヴィンカレッジ・ハクマン図書館所蔵デ・コーン文書調査(小武海櫻子,2013年3月24日~31日),(4)上海図書館所蔵紅卍字会関係資料調査及び南京紅卍字会会長陶晋遺族へのインタビュー調査(孫江,2012年12月),(5)南京市図書館所蔵紅卍字会関係資料調査(孫江,2013年3月),(7)台湾中央研究院台湾史研究所所蔵関連資料調査(張士陽,2013年3月18日~27日)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の活動の中心にすえた上記のワークショップにおいては,当初5名の海外研究者の招聘を計画したが,予定した5名のうち中国近代の道教・仏教を中心とした宗教社会史を専門とするフランス・アメリカの2名の研究者が最終段階で日程の都合がつかず,参加できなかったのは残念である。しかし,中国・台湾において民衆宗教研究に従事する専門研究者3名を無事招請することが可能となり,そこでの討論をつうじて中国近代における民衆宗教の成立・発展過程に「災害」や「戦争」体験が深く関わっていたことを明らかにすることができた。したがって,基本的にほぼ予定どおりの成果を収めることが出来たと考える。 このワークショップをつうじて,プロジェクトメンバーの研究課題もより一層明確となり,主として2012年12月から2013年3月の期間に実施された海外資料調査にも研究会での討論の成果や問題意識を生かすことができたと考える。 また,今年度より朝鮮近代宗教社会史を専門とする趙景達教授が参加し,近代東アジアに勃興した民衆宗教を広域的かつ横断的に比較しその特質を検討することができるようになった点も指摘しておきたい。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度のワークショップでカバーしきれなかった地域・時期・団体に着目し,6月22日(土)に第二次ワークショップの開催を準備している。このワークショップには,昨年来日できなかったフランスのグーセール教授(フランス高等研究院教授)も参加の予定である。 この第二次ワークショップの準備とともに,昨年10月のワークショップ提出論文及びプロジェクトメンバーの成果論文を中心に,広く研究成果を社会に還元するために,論文集『戦争・災害と近代東アジアの民衆宗教』(仮題)の本年度内の刊行をめざし,編集作業を開始している。本年度の主要な活動はしたがって,メンバー各自の論文作成や翻訳・校正作業が中心となる。 この作業と並行して,国内・海外への補充資料調査を実施する予定である。上記論文集に間に合わない場合や資料集的性格が強すぎるなど,内容・形式上収録できないものは,プロジェクトメンバー各自が各大学の紀要等に発表する形での成果の公表を考えている。
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