研究課題/領域番号 |
23320029
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小佐野 重利 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (70177210)
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研究分担者 |
秋山 聰 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50293113)
浦 一章 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (90203596)
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キーワード | 複製絵画 / トスカナ大公国 / メディチ家 / 王侯絵画コレクション |
研究概要 |
当該年度交付申請書記載の研究実施計画にしたがって、まず国内でウフィツィ美術館とパラティーナ美術館総目録から関連の複製絵画を割り出す作業を行なった。それに基づき、2011年8月末から9月初めにフィレンツェに於いて、海外研究協力者のウフィツィ美術館アントニオ・ナターリ館長およびその他2名の研究協力者との研究打ち合わせののち、両美術館の展示室と収蔵庫で関連複製絵画のほとんどを実見調査し、併せて調査済作品の一部分については写真購入もしくは現地写真家による写真撮影を実施した。一方、関連の一次資料(収集目録の記載および王侯の書簡)の調査・筆写作業は、主にウフィツィ美術館側の2名の研究協力者によってフィレンツェ国立美術館連合監督局の古文書館とフィレンツェ国立文書館において開始され、ある程度まで進捗している。筆写済みの同資料の翻訳作業は、分担者浦一章によって目下営為行なわれている。 本年度は、特にフェルディナンド大公子の絵画収集に関する調査および関連資料の収集を行ない、同収集において複製絵画が担った機能や意義に絞って精査した。その成果は、中間報告として、研究代表者によって論文「トスカナ大公国メディチ家のフェルディナンド大公子の絵画収集における複製絵画」として公刊された。大公子の死後の収集作品目録やカール・ロートやジュゼッペ・マリア・クレスピに宛てた彼の書簡から、大公子の複製画収集への積極的な姿勢を垣間見ることができる。さらに、大公子の収集における複製絵画の役割として特筆に値するのは、主にフィレンツェおよびその近郊にある修道院や教会から祭壇画(祭壇衝立画)を自分の収集に加えるために、その代替品としてオリジナルの祭壇画が設置されていた場所に大公子が雇用した画家によるオリジナルからの模写画を置いたことである。大公子に関連するオリジナルと模写画の追跡は概ね終了し、関連の古文書調査が継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度にリストアップしたパラティーナ美術館に所蔵される複製絵画のうち、ピッティ宮殿ソッフィトーネの収蔵庫に保管される作品類の実見調査と、ハプスブルク=ロートリンゲン家トスカナ大公国の絵画コレクション中の複製絵画に関するウィーン美術史美術館およびオーストリア国立図書館等での調査だけが平成24年度調査に先送りになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度にはまず前年度から先送りされた調査課題を遂行するとともに、平成23年度当初の実施研究計画に沿って進める。ただし、時間的に多大な労力のかかる割には調査成果が上がらないことが判明した古文書調査については、本研究課題の核をなすと思われる、トスカナ大公およびその家族、あるいは姻戚関係のあったハプスブルク家側君侯に関する一次資料に絞って調査する。そうすることによって、17世紀以降、1820年頃までのトスカナ大公絵画コレクションの歴史的な展開における複製絵画の役割およびその変遷が、節目ごとにより明瞭になると考える。
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