研究課題/領域番号 |
23320031
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡田 温司 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (50177044)
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研究分担者 |
木俣 元一 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (00195348)
金井 直 信州大学, 人文学部, 准教授 (10456494)
前川 修 神戸大学, その他の研究科, 教授 (20300254)
松原 知生 西南学院大学, 国際文化学部, 教授 (20412546)
篠原 資明 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (60135499)
門林 岳史 関西大学, 文学部, 准教授 (60396835)
石田 美紀 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70425007)
秋庭 史典 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (80252401)
阿部 成樹 中央大学, 文学部, 教授 (90270800)
喜多村 明里 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (90294264)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 目と眼差し / 保存と修復 / 共同体 / 記憶 / シンボリズム / 現代美術 |
研究概要 |
本年度は2回の国際シンポジウム、「スポリア――建築・都市の継承と再利用」2013年7月28日(日)と「現代美術の保存と修復――何を、いかに、どこまで」(2013年3月23日)を、本科研の主催で京都大学大学院人間・環境学研究科にて開催した。過去の建築をいかに再利用していくか、それは、地球規模の環境破壊と資源の乱用の中で大きな現代的問題となっている。このテーマをめぐって、古代と中世イタリア、現代イタリア、明治以降の近代日本、現代の日本について、それぞれの具体的な事例と問題点が、イタリアの研究者(オリンピア・ニリオ、ボゴダ大学教授)を含めて5人の専門家によって報告され、活発な議論が行なわれた。過去の建築の再利用、いわゆる「スポリア」は、全体の構造から部分的断片に至るまで、都市空間に関わるものから個々の建造物に至るまで、様々なレヴェルに及んでいるが、そこには、経済的で実践的な理由のみならず、多様な政治的・宗教的・社会的要因が絡み合っている。たとえば、過去の建築の断片を再利用することで、そこに政治的あるいは宗教的なシンボル的意味を担わせたり、共同体や集団の記憶を過去から未来に伝えたりするといった役割である。こうした問題は、前年度以来とくに注目してきた、芸術作品や文化財の保存と修復というテーマとも密接に関わっている。そもそも、本科研が「目と眼差し」を主題とする以上、われわれが現在見ているものが、制作の時点からいかに変化しているか(経年変化によるものであれ、人工的な変更によるものであれ)という問題を避けて通ることはできない。時代の「眼差し」の変化とともに、作品そのものが変容してきたという実態が、こうした研究やシンポジウムでの議論の中から、はっきりと浮かび上がってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は次の6つの観点から「西洋美術における「目」と「眼差し」の総合的研究」を目指している。すなわち、1.作品内部における「目」と「眼差し」、2.鑑賞者・観察者との関係性、3.「目」と「眼差し」の力、4.神話や文学における「目」と「眼差し」、5.芸術論、美学思想、美術史学における「目」と「眼差し」、6.光学的・視覚的装置と「眼差し」である。これまで、主に1と2と4と5に関しては、研究会や国際シンポジウム等によって、期待以上の成果を得ることができた。とりわけ、芸術作品や文化財への「眼差し」に時間性が深く関わっていることが、修復や保存という視点を新たに導入することで、浮かび上がってきた。この点は、当初の予想を超える大きな成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、上に挙げた6つの観点の内、いまだ十分に検討が進んでいない6番目のテーマに重点的に取り組んでいきたい。とりわけ、映像論や映画史、メディア論、ニューロサイエンスにおける視覚と美をめぐる言説等、といったテーマである。これらについては、科研のメンバーで、それぞれの分野の専門家でもある石田美紀と門林岳史による研究報告の発表会を秋に予定している。さらに、フランスの美術史学における「目」と「眼差し」の射程、とりわけアンリ・フォシオンをめぐるテーマについて、フォシオンの翻訳等も手がけ、近代フランス美術と方法論に精通した阿部成樹による報告も予定している。これらを踏まえて、最終年度となる本年度は、研究報告書の作成に向けて営為努力したい。
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