研究課題/領域番号 |
23320034
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
大橋 一章 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80120905)
|
研究分担者 |
肥田 路美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00318718)
李 成市 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30242374)
小野 佳代 早稲田大学, 総合研究機構, 客員主任研究員 (60386563)
|
キーワード | 文化財科学 / 美術史 / XRDF / X線CT / 表面仕上げ / 技法 |
研究概要 |
本研究の目的は、わが国に現存する古代・中世の文化財(木彫像、金銅像、塑縁、美術工芸品、絵画等)を取り上げ、すでに科研費で購入済みのX線機器類(X線CTスキャナー、複合X線分析装置XRDF)を活用しつつ、主としてその表面仕上げの技法を解明しようとするものである。 2011年度に実施した調査は、まず第一に、奈良薬師寺東院堂安置の東塔露盤蓋板・伏鉢のXRDF装置を用いた調査であり、第二に、早稲田大学会津八一記念博物館所蔵の三十三応化身像(至徳元年・1384、木造彩色)六体のX線CTスキャナーとXRDF装置による調査であった。前者の調査では、露盤蓋板と伏鉢の表面仕上げは鍍金によるものと判明した。 後者の調査では、南北朝時代のオリジナルの白色顔料を中心に調査したところ、少なくとも二種の白色顔料(カリウム硫酸鉛、白土)が用いられており、しかも彩色する場断・部位によって二種の白色を使い分けていたことが明らかとなった。これらの調査結果については、2011年10月1日(土)に早稲田大学奈良美術研究所が主催した国際シンポジウム「文化財の解析と保存への癖しいアプローチVIII」(於早稲田大学小野記念講堂)において報告した。このほか、日本・韓国の博物館へのX線調査依頼をすでに行っており、来年度以降の調査へ向けて準備を進めている。2011年度の研究成果は、『奈良美術研究』13号(早稲田大学奈良美術研究所、2012年3月)にまとめ、刊行した。 今後は日本以外の韓国や中国にも調査地を広げ、多くのデータを蓄積することによって、各時代の文化財の表面仕上げの技法を明らかにしていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は奈良薬師寺の東塔露盤蓋板・伏鉢のX線調査を実施したが、調査環境が整っていたこともあり、十分に満足のいくデータを取得することができた。薬師寺といえば、奈良時代の国家官寺であり、作品に用いられた銅の成分や表面仕上げの技法を知ることは、まさに当時の日本の鋳造・制作技術の水準を知ることに他ならない。露盤蓋板と伏鉢が鍍金仕上げと判明したことの意味も大きいと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、奈良薬師寺の金銅製品や金銅仏(金堂薬師三尊像、東院堂聖観音像等)のX線調査を実施し、楽良時代の鋳造に用いられた銅の成分や産地、製作技法の問題を明らかにしていきたい。すでに、日本や韓国の博物館に対して調査依頓を行っているため、金銅仏に限らず、木彫像や絵画、美術工芸品等のX線調査も実施可能となる予定である。これまでの調査では、XRDF装置の設置に時間を要し、また設置状態によっては測定不可能なケースもあったが、本年度、XRDF装置を載せる専用の台の購入したため、今後は幅広い調査が行えることが期待できる。
|