最終年度となる本年度は、早稲田大学に所蔵されているエジプト、フスタート遺跡出土遺物を中心に調査を行い、イスラーム時代のエジプトを中心とした物質文化の総括的な研究に取り組んだ。出土遺物は早稲田大学および出光美術館の合同調査によって、1978年から1982年にかけて実施された発掘調査の出土遺物で、正式にエジプト政府から日本調査隊に分与された貴重な遺物である。 5月には、ルーヴル美術館によるウズベキスタンのブハラ・オアシスに点在するイスラーム時代の遺跡の発掘調査にガラス班として参加した。ここでは、パイケンド遺跡を中心に発掘されたガラス器の精査を行い、エジプト資料と比較することで、この地域の特質を明らかとした。成果は、2015年度に開催される国際ガラス史学会で報告する予定である。 また、秋には、ロンドンで行われたイラン文化と地中海ガラスに関する二つのシンポジウムに参加し、欧米を中心とした研究者との情報交換を行い、加えて、大英博物館、ビクトリア・アルバート美術館での資料調査、パリのルーヴル美術館で連携研究者のRocco氏とブハラ調査の打ち合わせを行った。 また、学会や学術的研究会のほかに、コプト・イスラーム物質文化に関わる公開研究会を早稲田大学、東京大学、国士舘大学等で計4回の実施し、社会に向けての研究成果の発表の場とした。 以上の活動によって、ガラス器と陶器を中心に中世イスラーム時代の生活文化の諸相を解明し王という研究の方向性の確立した。今後は、4年間の研究で生じた新たな課題としての物質文化の地域性についての比較研究を継続していく必要性を感じている。
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