研究課題/領域番号 |
23320043
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
宮廻 正明 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 教授 (40272645)
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研究分担者 |
古田 亮 東京芸術大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20259998)
荒井 経 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 准教授 (60361739)
鴈野 佳世子 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 助手 (40570065)
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キーワード | 文化財保存学 / 日本画 / 模写 / 保存修復 / 壁画 / 美術史学 |
研究概要 |
本件は現存する古画調査および近代日本画の模本調査を通して美術の創造に「模倣」がどう関わってきたかを整理することによって、「模倣」がときに原本を"超越"し、「創造」を生み出してきたという史実を明らかにする。また、現代における東アジアの模写教育の実情を調査し、近代日本の模写教育を相対化することで、芸術家育成に対する重要性を検証していく。 平成23年度は東京藝術大学大学美術館所蔵の模本整理及び調査、模本資料収集、海外調査(中国・韓国・台湾)を中心に研究を進めた。第一回ワークショップを開催し研究成果発表を行う他、代表者・分担者がそれぞれ学会発表、論文発表、講演を行った。模写の実技的研究としては従来の模写技法とデジタル技術を融合した新たな手法(特許4559524号)により、壁画表面の質感まで再現した高精度の複製制作に取り組み、高句麗古墳壁画江西大墓の複製を完成させた。敦煌石窟壁画、陝西省唐墓壁画についても今後複製制作を行うため、現地調査・基礎データ収集を行った。また、アジアにおける模写教育の現状調査のため中国・敦煌美術研究所、中央美術学院、韓国・ソウル大学、聖神女子大学、台湾・台湾師範大学、東海大学等、主要な芸術大学や研究機関を訪問し、視察、意見交換を行った。 ワークショップでは模写史の概略をまとめ「模倣」の"表現"としての価値を見直し、模写の新技術の紹介と海外調査の報告を行った。研究成果として作品を展示することで国内外の関係機関から反響があり、模写の現代的なニーズを再確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通りに調査とワークショップ開催を実行することができた。質感を伴う高精度の壁画模写研究に関して、当初は敦煌研究院、陝西省歴史博物館を訪問しそれぞれが管理する壁画の調査を行い、連携に向けての準備段階として人的交流を深める計画であったが、特に陝西省歴史博物館側からの強い要望で、具体的な共同研究に進展させるため中国大使館を通しての正式な交渉に至った。また、研究成果として発表した高句麗古墳壁画の模写が国内外のメディアに取り上げられたことをきっかけに新たな協力関係を築くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は昨年度の研究成果発表として高句麗古墳壁画の模写を展示し、公開シンポジウムを行う。また、年度内に第二回ワークショップ開催を予定している。昨年度から引き続き、中国陝西省の唐墓壁画、北朝鮮の高句麗壁画、法隆寺金堂壁画など質感の異なる壁画の模写サンプルを制作し、絹本資料および板絵についても同様に質感を伴った模写の制作技法を研究開発する。海外調査は西欧にも範囲を広げ、膠を用いて描かれた絵画全般を対象に日本画の伝統技法を応用した保存方法、模写方法の研究を進める。芸大美術館所蔵の模本資料については昨年度から整理作業を進めており、今後は作家別、画題別の調査を進めていく。
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