研究課題/領域番号 |
23320045
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
羽田 康一 国際基督教大学, キリスト教と文化研究所, 研究員 (30240724)
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研究分担者 |
橋本 明夫 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (10237927)
赤沼 潔 東京藝術大学, 美術学部, 准教授 (30267687)
北郷 悟 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (70242394)
黒川 弘毅 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (50366879)
長谷川 克義 長岡造形大学, 造形学部, 准教授 (80460319)
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キーワード | 古代ギリシア / ブロンズ彫刻 / リアーチェの戦士 / ポルティチェッロの断片群 / クィリナーレの拳闘士 / 制作技法 / 鉛同位体比測定 / 復元鑄造 |
研究概要 |
レッジョ・カラーブリア国立博物館の改築の機会に、2010年3月から2011年末にかけて、古代ギリシアのブロンズ彫刻「リアーチェの戦士AB」の第三次修復研究が行われ、私たちもその間に三回現物調査を実施した。まず2010年4月、次いで2011年5月と8月。ここでは科研費を得た2011年4月以降について記す。 この作品をめぐる現在の最大の争点は、塑造原型から〓原型にかけての工程が、直接法(牝型を使わない)か間接法(牝型を使う)か、どちらで行われたかである。紀元前五世紀中頃に作られ、発見時に多くの鑄造土が体内に残っていた二体の「リアーチェの戦士」の制作技法の推定は、ギリシア美術の最盛期である前五/前四世紀におけるブロンズ彫刻についての基準を提供する。今回の第三次修復の過程で、鑄造土がブロンズ内表面まで取り除かれ、内部表面に残された、制作技術を示唆する多数の手掛かりを、初めて肉眼または内視鏡で観察・検討することができるようになった。 第二次・第三次修復を主導したローマ保存修復高等研究所の修復者たちは、一貫して直接法説を維持している。私たちはこの一年間で、間接法説からかなり直接法説に傾いてきた、というのが客観的な記述になるだろう。しかし、まだ分からない。私たちは「リアーチェ」だけを見ていても解決しないと考え、並行して「ポルティチェッロの断片群」(レッジョ・カラーブリア国立博物館)、「クィリナーレの拳闘士」(ローマ国立博物館)についても現物調査を重ねているが、それらは間接法説を補強する証拠を示している。 現物調査の際、基台への足の固定と、持物の手中への固定のために充填された鉛の試料を採取し、別府大学文化財研究所の平尾教授に鉛同位体比計測を委託した。「リアーチェ」の鉛の計測はこれが初めてである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一年目は現物調査だけ、二年目から復元鑄造、という計画に変更はない。イタリア側の修復研究が当初の予定から大幅に遅れており、私たちの研究にとってはそのことが逆に幸運となっている。二回で終わるはずだった内部観察が通算四回できそうである。
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今後の研究の推進方策 |
2012年6月に通算四度目の現物調査を行った上で、8月から、得られた仮説に基づいて東京藝術大学の鑄金工房で復元鑄造実験を行い、仮説を検証する。第二次修復を担当したローマの修復所も、確かに自分たちの直接法説を実証する復元実験を行ったが、それは「リアーチェの戦士 B」の右脚一本の塑造原型止まりで、あまり説得力を持たない。私たちは今年度から来年度にかけて、「AB」の全身の、塑造原型から〓原型の工程を試行する。
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