研究課題/領域番号 |
23320045
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
羽田 康一 国際基督教大学, 付置研究所, 研究員 (30240724)
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研究分担者 |
橋本 明夫 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (10237927)
赤沼 潔 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (30267687)
北郷 悟 東京芸術大学, 学内共同利用施設等, その他 (70242394)
桐野 文良 東京芸術大学, その他の研究科, 教授 (10334484)
黒川 弘毅 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (50366879)
長谷川 克義 長岡造形大学, 造形学部, 准教授 (80460319)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 古代ギリシア / ブロンズ彫刻 / リアーチェ / 制作技術 / 再現実験 / 鑄造土 / 国際情報交換 / イタリア |
研究概要 |
古代ギリシアのブロンズ彫刻「リアーチェの戦士AB」(紀元前五世紀中頃)の制作技術の解明が本研究の目的である。比較参照のため他のブロンズ彫刻についても調査している。 まず昨年度の研究経過を時系列で記す。4月、別府大学文化財研究所を訪問、「リアーチェの戦士AB」の固定材としての鉛の試料について、成分分析と鉛同位体測定を委託。「蟹満寺釈迦如来坐像」シンポジウムに参加(京都)。「東大寺大仏」などを調査(奈良)。6月、「昭忠碑」の鳶の調査、シンポジウムに参加(仙台)。海外調査旅行(フィレンツェで「リヴォルノのトルソ」ほか、ローマで「クィリナーレの拳闘士」「カピトリーノの牝狼」ほか、レッジョ・カラーブリアで「リアーチェの戦士AB」)。8月、北海道で寒冷地におけるブロンズ彫刻のメンテナンスについて調査。9月、11月、全体会合(東京藝大)。9月~3月、「リアーチェの戦士AB」の3Dデータ加工(武蔵野美大)。鑄造土、鑄造坑、古代地中海域における鉛の流通、に関する文献調査。12月、別府大学から調査報告書を受領。12月~3月、再現実験用元原型制作(武蔵野美大)。 昨年度も最大の課題は、「リアーチェの戦士AB」の塑造原型から蝋原型にかけての工程がどのように行われたか、直接法(牝型を使わない)か間接法(牝型を使う)か、あるいは「第三の道」かについて、自分たちの仮説を構築することにあった。そして様々な根拠に基づいて、「ほぼ疑いなく間接法で作られた」という結論に達した。ただ、直接法説を打ち出した第二次修復報告書で詳細に記載された、体内から取り出された鑄造土のごく一部に、直接法としか解釈できない痕跡があるので、鑄造土のその部分だけでも再度現物調査を行う必要がある。 昨年度の成果は、今年度8月にアジア鑄造技術史学会韓国大会で発表した上で、今年度から着手する再現実験の過程で検証更新していくことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
第一に、根本的な原因は、問題の難しさにある。第二に、仮説を構築すべく現物調査(3回)、文献調査、会合・議論を重ね、3Dデータ加工、元原型制作に時間をかけたため、次の段階である再現実験になかなか取りかかれなかった。第三に、途中でイタリア側の責任者が替わったこと、また「リアーチェの戦士AB」の修復が終わった後も財政上の理由で博物館に展示できない状態が続いていることも影響している。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の計画では、最終年度(3年目)となる今年度で再現実験を鑄造後の仕上げまで終える予定であったが、上記の理由でそれは不可能である。現時点では、平成25~27年度に「AB」の元原型の完成、鑄造坑の再現構築と、塑造原型から蝋原型の間の工程、27~29年度に鑄型から鑄造、仕上げまでの工程の再現実験を想定している。本研究課題は今年度(平成25年度)で終了するので、26~29年度の4年間について、改めて申請する予定である。
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