研究課題/領域番号 |
23320046
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
馬渕 明子 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (30114656)
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研究分担者 |
池田 祐子 独立行政法人国立美術館, 京都国立近代美術館, 主任研究員 (50270492)
高木 陽子 文化学園大学, 服装学部, 教授 (60307999)
天野 知香 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 教授 (20282890)
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キーワード | ジャポニスム / 装飾 / デザイン |
研究概要 |
全員が今後の研究に必要な基礎的資料を収集し、さらに幾つかの具体的テーマに絞って研究を進めた。 馬渕はアール・ヌーヴォーの立役者であるジークフリート・ビングの同名の店の指針について研究した。とりわけ彼が1888年から3年間にわたって出版した雑誌『芸術の日本』における言説を分析すること、アメリカなど外国からの情報をどのように取り入れたか、の検証をおこなった。また、この時期に日本美術がどのように市場に出回ったかについて,コレクションの売立てを検証し次頁の図書において報告した。 天野は両大戦間に漆装飾で活躍したジャン・デュナンを中心に基礎的な研究を進め、フランス国立図書館等において当時の批評を中心とした文献資料および作品を調査した。また当時の室内装飾において輸入品を含めた漆作品が使用される例を定期刊行物等を通じて調査した。その結果デュナンの作品は、それまでの日本の漆作品の模倣とは異なり、両大戦間フランスの装飾芸術を特徴づけるモダンな特質が注目されたこと等が確認された。 池田は日本美術・工芸の普及に寄与したハンブルク工芸博物館の館長ユストゥス・ブリンクマンのもとで働いたふたりの人物、日本人の原震吉とフリードリヒ・デーネケンを中心に調査した。ハンブルク工芸博物館に保存されている原の出張記録を閲覧することで、当時の各地の工芸博物館における日本美術・工芸品をめぐる状況を調査した。またドイツ工作連盟資料館では、デーネケンとヘルマン・ムテジウスの書簡を閲覧することで、日本美術・工芸品が近代デザインの発展にどのように寄与していたかを調査した。 高木は日本の造形を伝える媒体であった染め型紙に注目して、一般大衆が理解した日本を翻案する消費財としての英国のジャポニスム、それを最新の装飾芸術として需要し、前衛美術の要素としたベルギーのアンリ・ヴァン・ド・ヴェルドの例を調査し、2012年4月に刊行されるKATAGAMI Style展図録で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎的な資料については全員が過去からの蓄積をもっているので、次の段階に進むことができ、各国の図書館レベルでの刊行物による資料の収集や分析は進んでいるが、次のレベルにおける原資料(書簡、博物館公式記録、作家遺族との連絡)等において、まだ十分な時間をかけることが出来ていない。しかし、各自が次の段階の課題を把握し、時間と手間をかけることでそれを乗り越えることができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度12月に予定している国際シンポジウムにおいて、研究の前半の報告を行い、海外から招聘する研究者との交流において、情報を収集しさらなる課題を設定する。そのため、次年度前半は原資料の収集と分析に時間をかける予定である。
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