1)書誌データベース(以下、DBと略記)の作成と公開:前近代日本の豊かな書物文化の実態を世界に知らせ、新たな時代の社会と学界の要請に応えうる、詳細な古典籍〈記述的〉書誌DBの作成に没頭した。具体的には西尾市岩瀬文庫の書誌DBを、約1万9千8百点(タイトル数)まで完成させ、岩瀬文庫のホームページより公開した。名古屋大学附属図書館の「古典籍内容記述的DB」についても、主に神宮皇学館文庫の調査を進め、また図書館職員によるOPACデータ作成時に判明したデータの誤りを修正した。 2)統合的DBへの進展:岩瀬文庫の書誌DBを統合的DBに発展させるために、本年度も重要資料20数点を選び、全文テキストの作成を継続した。また、重要資料を選定し、筆蹟画像データを作成した。以上の全文テキストデータと筆蹟サンプル画像データをアップし、書誌データにリンクさせた。 3)研究事業について社会への説明と貢献:本年度の岩瀬文庫の調査の過程で得られた新見を、岩瀬文庫を支えてきた市民に向けて報告公開する展示「こんな本があった!岩瀬文庫平成悉皆調査中間報告展12」を開催し、併せて図録を編纂刊行し、講演会「今年度の調査からわかったこと Vol.12」を行った。また、DBを駆使して尾張・三河関係の重要資料を選定し、3月刊『愛知県史 別編 文化財4 典籍』の中で取り上げた。同時に悉皆調査とDBより新たに得られた知見に基づき、岩瀬文庫開設者、岩瀬弥助の伝記と集書事業について、同書の中で概観記述した。
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