研究課題/領域番号 |
23320054
|
研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
後藤 昭雄 成城大学, 文芸学部, 教授 (80022284)
|
研究分担者 |
荒木 浩 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (60193075)
赤尾 栄慶 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部, 上席研究員 (20175764)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 金剛寺 / 寺院資料 |
研究概要 |
聖教の全体的調査 本研究の柱の一つとして、毎月一度、金剛寺に出張して調査を行い、その成果にもとづいて、先に作成していた『金剛寺聖教目録』に補訂を加えた。金剛寺所蔵の全体55函(米蔵所蔵の聖教函を除く)のうち、29函、点数にして6072点、約62パーセントの聖教について作業を完了した。また、この作業の過程で、禅恵に関する聖教については、奥書を中心として比較精査する必要があることが判明したので、その資料を含む4函については奥書を調査し、比較のため、写真撮影を行い、データとして入力した。 貴重典籍の調査 今年度は「涅槃経」を集中的に調査し、詳しい調書を作成し、将来の精査、公刊を視野に入れて、専門家に依頼して写真撮影を行った。 研究成果の公表 平成24年7月21日に国際仏教学大学院大學日本古写経研究所文科省戦略プロジェクト実行委員会との共催で、同大學において、金剛寺所蔵「宝篋印陀羅尼経」(重要文化財)を仏教学、文化財学、国文学等の研究者が多面的に議論する国際シンポジウム「テキストとしての『宝篋印陀羅尼経』とその展開」を開催し、赤尾栄慶(研究分担者)、海野圭介(連携研究者)が研究発表を行った。また、その成果が『金剛寺『宝篋印陀羅尼経』』(平成25年2月)として公刊されたが、これに赤尾栄慶は「文化財的観点からみた金剛寺本宝篋印陀羅尼経」、海野圭介は「和歌史における金剛寺本宝篋印陀羅尼経」を発表した。後藤昭雄(研究代表者)は金剛寺蔵の『文集抄』『和漢朗詠集』『花鳥集』『全経大意』等についての研究成果を著書『本朝漢詩文資料論』(平成24年11月)で公表し、後の2点については本文を翻刻により紹介した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度までの研究計画として(1)金剛寺所蔵貴重典籍の総合研究と成果公表 (2)金剛寺聖教の形成と伝播についての集約的調査 (3)金剛寺の経藏構成の解明を掲げているが(最終26年度には「金剛寺聖教の持つ国際性の提示」を計画している)、(1)については毎月一度の金剛寺へ出張しての実地調査により、前科研までに得られた調査結果を検討し、分析を進めた。また、重要典籍の調査については23年度に引き続き、金剛寺当局の理解、許可が得られたので、重要文化財に指定されている資料の調査、写真撮影を行い、将来における成果公表の準備をおこなった。成果公表については、他研究機関との共催の形で学際的な国際シンポジウムを行い、その成果を報告書として公刊した。また研究代表者がこれまで調査研究を進めてきた金剛寺資料5点につき、著書のなかで成果を公表し、うち2点については全文を翻刻して紹介した。(3)については、上記の金剛寺における実地調査において奥書識語の採集、データベース化を行い、これに基づく研究の資料作成を行った。 従来の科研で作成した仮目録のデータ統合、確認作業を着実に進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
1 前科研までの研究成果の検討と重点調査書籍の確定(1) 前科研までの調査を集約的に検討し分析を進める。金剛寺の実地調査に加え、年数回の研究会を開催し、併せて研究推進会議を行う。 2 貴重典籍の調査 指定美術品としての文献の調査を継続する。3 重要聖教類の調査、読解。最終年度まで共同研究会部会を継続し、全体の共同研究会で成果を報告する。4 金剛寺聖教の形成と伝播についての集約的調査 (1)前科研までに作成した仮目録のデータ統合と検討を行う。研究の基盤として、月一回の金剛寺実地調査を継続する。(2)23、24年度の調査を通じて把握した未調査聖教の分析を行う。(3)『金剛寺古記』『河内長野市史』を軸とする重要聖教識語のデータベース化の基礎ファイルを作成し、データの補正を継続する。 5 金剛寺の経藏構成の解明 引き続き聖教伝来のネットワークと形成の問題を研究し、分析を進める。また関連寺院の調査グループと情報交換を行い、研究の展開についての認識を深める。 6 金剛寺聖教の持つ国際性の提示 26年度における上記の研究成果の海外にむけての公表を視野に入れて、その準備を行う。
|