研究課題/領域番号 |
23320063
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岡室 美奈子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10221847)
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研究分担者 |
三神 弘子 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (20181860)
八木 斉子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (10339666)
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キーワード | アイルランド演劇 / ベケット,サミュエル / フリール,ブライアン / マクギネス、フランク / ガルヴァン,バトリック / ラジオドラマ / 『言葉と音楽』 / イェイツ,W・B |
研究概要 |
本研究の目的は、アイルランド演劇の総合的研究を推進するとともに、研究拠点を拡充し国際的に活躍しうる人材を育成することにある。 岡室は、月1回ベケット・ゼミを開催し、その成果として川島健、長島確とともに若手研究者の論集『サミュエル・ベケット!-これからの批評』(水声社)を刊行した。数度の査読と書き直しを経た論文を収録し国際水準を目指した。また早稲田大学大学院博士課程の菊池慶子をテキサス大学に派遣し、ベケットの草稿調査を支援した。岡室自身は写真論やメディア論の視点からベケットの後期テレビドラマと演劇について考察を進めた。三神は、八木とともに現代アイルランド演劇研究会を4回実施した。研究分担者、研究協力者が、それぞれ以下のテーマで報告を行った。「Patrick Gaivin:We Do It For Love(1975)、Stewart Parker:Spokesong(1975)にみられる歌と音」(三神弘子),「ブライアン・フジールのPerfomancesとヤナーチェクの弦楽四重奏曲第2番『ないしょの手紙』(磯部哲也),「キルロイとマクギネスの歴史劇:Double CrossとDolly West's Kitchen」(三神弘子),「Owen McCaffertyのMojo Mickyboと北アイルランドの演劇」(舟橋美香)。八木はベケットのラジオ劇を研究対象としており、本年度は、ベケットの影響を受けたピンターの作品の「音」にも目配りしつつ、「音楽」の役割が顕著な作品『言葉と音楽』に焦点をあてた。広範囲に文献を読み込む一方、大英図書館所蔵の録音を含めて数種類存在する「言葉と音楽」音源を比較検討した。ベケットは台本で「言語」と「音学」それぞれの定義を問い直すが、作品が実際に音波となる段階で両者の境界線は個々の出演者によってさらに書き換えられることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
岡室は、論文を執筆したほか、若手研究者のベケット論集を刊行し、海外のアーカイヴにベケットを研究する大学院生を派遣するなど若手研究者の支援を行なうなった。三神は、Irish Drama and Its Soundscapeの出版に向け研究会を開催し、各メンバーとともに作業を進め、八木はベケットのメディア論的研究の一環として、音源を文献とともに分析する方法の基礎を固めるなど、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
岡室は、引き続きベケットの演劇・テレビ作品をモダニズムにおける視聴覚テクノロジーとオカルティズムに関連づけながらメディア論的視点から分祈する。また、ベケットなどのアイルランド演劇を研究する大学院生や若手研究者を海外の研究機開等に派遣し、て国際的な活躍の場を与え、その育成を図るともに、若手と中堅・ベテラン研究者の交流を図り、新たにベケット論集を刊行する。三神は、平成23年度の成果をもとに、24年度には国際アイルランド文学会(IASIL、モントリオール)において舟橋美香とともに研究発表を行う(論文は受理済)。八木は、ベケットによる他のラジオ劇作品へと分析対象を拡げ、「音」の可能性をさらに多様な観点から明らかにする。
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