研究課題/領域番号 |
23320068
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
楯岡 求美 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (60324894)
|
研究分担者 |
北村 結花 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (10204918)
増本 浩子 神戸大学, その他の研究科, 教授 (10199713)
GRECKO Valerij 神戸大学, 国際文化学部, 講師 (50437456)
木村 崇 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 名誉教授 (80065234)
ERMAKOVA L 神戸市外国語大学, 付置研究所, 名誉教授 (70316032)
|
キーワード | 翻案 / 翻訳 / 明治 / 国際研究者交流 ドイツ、ロシア、アメリカ |
研究概要 |
異なる文化が接触し、受容される際、主として翻訳という方法がとられてきた。しかし、オリジナルを完全に移し替えることはできず、翻訳もまた、語順や音感など、なんらかの変化を伴う越境行為であることは近年の翻訳研究においても指摘されている。同時に、本研究は、グローバル化の進む中、かえって文化的衝突が深刻な問題としてクローズアップされている状況がある。本研究では、越境の可能性(相互理解)の是非を直接問うのではなく、そのような接触・交錯が起きた時に引き起こされる多種多様な変容に着目する。 翻訳研究でも、すでにオリジナルを変えることなく異なる言語に移し変えることが不可能であることは前提となっている。従来、不完全な翻訳の形式として、副次的にしか扱われてこなかった翻案を、マルチ・メディア時代を迎え、メディア間翻訳なども含む、文化受容・接触の際に様式や内容が変更されるものとして広くとらえることにする。翻訳を逆に翻案の特定の形式として捉え直すことにより、従来とは異なる視点を提供することを目的とする。その際、行き詰りを見せる文化創造に新たな創作手法としての可能性を合わせて検討したい。 初年度はナショナルなものへと統合する文化的手段の一つとしての歴史表象に注目した。歴史という物語は、語りの視点からみて都合の良い自己イメージの編集であり、さらにボロジノの祖国戦争の再現ページェントなど、視覚的イヴェントにすることによって、常に時代の要請に合わせて再創造(リフレッシュ)されている。また、失われた過去を現在のオルタナティヴとしてありえたかもしれないユートピア的イメージを恣意的に強調することによって、オスタルギーなどが現状批判として利用されている。このように、翻案として歴史表象をとらえなおすことは、歴史の恣意性や多様性を改めて示すことになる。その際、声などの身体表現に付随するパラ言語に注目する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
震災の影響で海外からの招聘予定の変更を余儀なくされたため、海外から招へいし、国内の研究者との交流を進めるというネットワーク形成には至らなかった。しかし、分担者各自が従来から交流をしている国内外の研究者からは当該研究テーマについて、強い関心が寄せられており、今後、このテーマで広く意見交換をする素地は十分にある。 また、分担者の研究自体、半年以上の遅れを余儀なくされたので、基本的な情報交換の場としての研究会も十分には開けなかったが、メールなどでの意見交換により、「翻案」「翻訳」と言った概念イメージの差異についてはある程度議論できた。ただし、言語感覚の違いをメールのみで突き詰めるのは難しく、今後の研究会での議論が必要になっている。
|
今後の研究の推進方策 |
海外派遣の形で交流は始められているので、今後もコンスタントに進めていきたい。同時に、交流を深めるため、招聘にも力を入れていきたい。 翻訳、翻案といった言葉(概念)が惹起するイメージの相違について、関係者かんでより広く討議したいと考えている。
|