研究課題/領域番号 |
23320068
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
楯岡 求美 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (60324894)
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研究分担者 |
増本 浩子 神戸大学, その他の研究科, 教授 (10199713)
北村 結花 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (10204918)
GRECKO Valerij 神戸大学, 国際文化学部, 講師 (50437456)
ERMAKOVA L 神戸市外国語大学, 付置研究所, 名誉教授 (70316032)
木村 崇 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 名誉教授 (80065234)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 翻案 / 明治 / プーシキン / 翻訳 / 文化受容 |
研究概要 |
前年のナショナル表象と歴史の創造を中心として研究を踏まえ、本年度は、従来の翻訳研究では「見習い期間」としてあまり中心的に取り上げあられてこなかった、明治初期の翻訳・翻案について中心的に研究会を行った。明治にすすめられた近代化(ヨーロッパのシステム移入)は文化面でもすすめられた。新たに導入された概念が翻案の文学実践の中で内実を具体化するプロセスとなっている。 オリジナルに関する価値評価の違いや、特に「恋愛」という近代的な男女(人間)関係の変容にとっもなう文化手法の変化について、論じた。つまり、キリスト教的倫理観が共有されないなかで、読者の要求、江戸期の素養を身に着けている教養層の想定する伝統的規範に即さない芸術・文学表現が、受容する読者の側の読解不可能な壁にぶつかるということである。また、理念的にはオリジナルの内容・形式を重視する、近代的翻訳に理解を示した坪内逍遥なども、実践としては想定される読者層の道徳や文化常識に合わせた翻案になりがちであったことが明らかとなった。しかしながら、当時の出版事情は現在とは異なって、作家(翻訳家)の個性が重視されたわけではないため、出版プロジェクトとでもいうべきシステム全体を明らかにする必要があると考えられる。 また、ドイツ・トリア大学から招へいしたヘンリケ・シュタール教授は、各言語文化圏ごとにリジッドなルールを課せられた詩(韻文)を翻訳する際、オリジナルの言語体系と翻訳される言語体系の違いによって、内容・リズムの保存/変更される部分が異なること、その差異に、自国文化にとって好ましい文化的価値規範が読み込まれることを明らかにした。この指摘は、異なる文化間の交流もまた、中立的なものではなく、しばしば自己(自国)の都合で取捨選択が行われているという恣意性を明らかにしていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度が震災の影響で研究会の開催および招聘事業が遅れ、そのまま遅れを取り戻せていない。本年度もやはり渡航が中心となり、招へいを軸に国内外の研究交流を広げる目的はまだ端緒についたばかりであるが、ヘンリケ・シュタール教授の招へいは、東京・関西で有意義な取り組みとなった。
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今後の研究の推進方策 |
海外からの招聘と翻案としてのジャンル横断的表象について研究を進めていきたい。 次年度、研究の中間年に当たり、遅れを取り戻すとともに、中間報告書の作成に取り組みたいと考えている。 内容的にも、ヨーロッパの周縁としてロシアに受容された近代文化システムの移入という受容の二重性については、今後、研究を展開して行きたい。
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