研究課題/領域番号 |
23320080
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中川 裕 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (50172276)
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研究分担者 |
本田 優子 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (30405625)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アイヌ語 / 危機言語 / 音声資料 / 辞書 / 文法記述 |
研究概要 |
本年度は故片山龍峯氏が 1996 年から2002 年にかけて、北海道鵡川町在住の新井田セイノ氏および吉村冬子氏から採録したアイヌ語鵡川方言資料について、千葉大学の大学院生および札幌大学のアイヌ人子弟を含む学生の協力により、約150時間分のテープすべての聞き起しを終え、また辞書の項目となる単語と例文を抽出して、エクセル上で分類番号をつけて整理するところまで終了した。また、その語彙と例文に対応する音声データをパソコン上で切り出し、ファイル化を行ってきたが、それについても半分以上終了している。鵡川方言はこれまで沙流川下流域の方言とほとんど同じものだと考えられてきたが、この作業過程においてさまざまな違いが確認されており、アイヌ語の方言研究におおいに貢献することが期待できる。また現在、アイヌ文化の維持復興運動にともないアイヌ語の学習熱が高まりを見せているが、特に辞書類に関しては、方言的にも沙流・千歳方言に偏っているだけでなく、多くは非常に高額かまたは刊行数の限定されたものであり、一般の学習者が利用するのにあまり良い状況ではない。語学学習には音声による教材が不可欠だが、アイヌ語のような消滅危機言語において、新たに母語話者の音声を記録することはきわめて困難である。本研究の作業で抽出・整理された語彙・例文・音声データは、最終的にウェブ上で活用できる音声付日本語―アイヌ語辞典として、またアイヌ語の音声アーカイヴとして一般公開する予定であり、アイヌ語学習への寄与は非常に大きなものが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在の時点ですでに音声資料の聞き取りと単語例文の抽出はすべて完了しており、音声データの切り出し作業も順調に進んでいる。後はウェブ上で辞書として活用できるようにするための作業であるが、プログラム自体は別予算で外注の予定であり、8月までにほぼ完了する予定である。それと並行して文法の分析も進めており、進行に関してなんら問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の作業としては音声データの切り出し作業と、聞き取りの最終チェック作業を行い、それらを音声付日本語―アイヌ語辞典としてウェブ上で活用できるプログラムの作成を業者に依頼。12月頃までに実動できる体制を目指す。それと並行してアイヌ語鵡川方言の文法概説を執筆し、両者を報告書としてまとめる。
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