研究課題/領域番号 |
23320085
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田窪 行則 京都大学, 文学研究科, 教授 (10154957)
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研究分担者 |
今仁 生美 名古屋学院大学, 外国語学部, 教授 (20213233)
坂原 茂 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (40153902)
下嶋 篤 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (40303341)
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キーワード | 意味論 / 危機言語 / メンタルスペース / 類比マッピング / 空間把握 / ジェスチャー |
研究概要 |
(D類比マッピングの記述と形式化 時空間写像はイベントが持つ時空間の情報を利用する必要があることがわかっているために、イベントを媒介とした時空間の写像関係をできる限り網羅的に記述し、形式化する作業を行った。この成果の一部を田窪と坂原が9月にスイスのジュネーブ大学で、田窪が3月に韓国のキョンヒ大学で講演した。この研究は記述装置としてメンタルスペースを使うため、海外共同研究者のFauconnier氏に11月に来日してもらい、東京大学、京都大学で連続セミナーを行い分担者全員でアドバイスを受けた。 (2)時空間マッピングのジェスチャーによる検証実験の準備 Nunez氏たちは時間の話をする時に行うジェスチャー(空間にあるものを定位したり、方向を示したり、空間を区切ったりする動作など)が、時間と空間の写像と関係していることを示した。この方法は、話し手が老齢で実験やエリシテーションができない場合にも使えるため、琉球語のデータなどでも分析が可能である。Nunez氏と田窪が3月半ばに実験に必要なデータに関して議論し、そのうえで田窪が3月に宮古島に調査に行き、実験のための基礎資料を収集した。 (3)下嶋は人間の視覚的空間把握能力の基礎にある物体ベース注意(object-based attention)の能力について、Egly et al.(2002)のパラダイムを応用した実験的研究を行い、物体をその背景から際立たせるsegregationの機能と、際出された物体をより小さな部分に分節化するsegmentationの機能が区別できることの証拠を見いだした。また、これらの知覚・注意レベルの機能が、空間把握に必要な推論コストをどのように削減するかについて計算論的に明らかにした。これらの研究は、「図的表現の理論と応用に関する国際学会(2012)」にて発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定した計画内容はほぼ計画通り進行している。予算のうち30%が減額される可能性があったため、当初予定していたNunez氏の来日の日が決まらず、大幅に計画が遅れる可能性があったが、氏が別の予定で3月に来日したため平成24年度の宮古島調査の打ち合わせを行うことができた。その際、宮古島での調査項目の設定、調査計画をすべて確定できた。また、新たにゲッチンゲン大学Magdalena Kaufmann氏、ノースウェスタン大学Stefan Kaufmann氏の協力を得て、空間表現の論理領域へのマッピングに関する論理意味論的アプローチの研究打ち合わせができた。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な計画には変更はなく、空間と心理実験担当の下嶋氏がサバティカルで二年間在外研修をするため、実験に関する部分は縮小する。その代わり、Nunez氏の全面的な参加が可能になったため、ジェスチャーの観察による時間と空間の写像関係を調査する。心理実験はNunez氏との緊密な協力関係により実施していく。また、理論面での貢献としてKaufmann夫妻の全面的な協力を得て、研究を推進する。
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