研究概要 |
半世紀以上にわたる生成文法理論の発展は、述語の意味(項構造)の構造化から、文が示す情報の構造化へ、その構造構築における操作と役割が語彙範疇から機能範疇へ、と変化してきている。本研究課題では、この流れに、「文」には、「Predicativeな意味」「Propositionalな意味」「Performativeな意味」があり、それは、機能範疇の観点では、それぞれ、vP、TP、CPシステムと対応するとの仮説から、各々の機能範疇がどの程度独立した意味や機能を持ち、どの程度の依存関係を示すのかを解明することである。それに対し、研究代表者のこれまでのvP領域現象(Hasegawa 1999, 2001, 2004, 2007, 長谷川2010ほか)とCP領域現象(長谷川2007、2010、Hasegawa 2009, 2010ほか)の理論的考察・発展から、その2つの領域の接点となるTP領域現象に迫り、vPの情報がどの程度CP領域現象に関わり、また、その逆であるのかに注目して研究を進めた。また、本研究のもう一つの特色は、生成文法研究のこれまでの英語はじめの印欧言語、言語タイプ的には主要部前置言語の考察から理論化がなされてきた流れを、典型的な主要部後置言語の日本語の考察から、仮説の検証および理論化を目指すことであった。日本語では、vP現象、CP現象は文末(節の右端部)に機能範疇主要部が明示され、それが統語現象を司ることが分かっているが、それは、節の左端部の文頭(指定部)に明示される英語などの主要部前置言語とは大きく異なる点であり、両言語タイプからの考察が理論的発展には欠かせない。 本研究により、述語の意味やタイプと関わるvP近辺にはAspP、VoiceP、ApplePといったSub-headが存在し、文のアスペクトや時制解釈、特に、埋め込み文における主文と関係する時制解釈に、TPだけでなくそうしたvP近辺の機能範疇が関わっていることを、日本語と英語の現象を中心に明らかにできた。成果は研究書として刊行予定である。
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