研究実績の概要 |
本研究は,イエズス会が16世紀~17世紀に布教現地で作成した日本語及びコンカニ語(インド)語彙集とその印刷出版活動を,同時代語彙集及びイエズス会の言語記録を総合するデータベースによって通覧可能とした上で,対訳辞書編纂に伴う語の同定(同語・別語の認識),及び漢字仮名行草体金属活字印刷の創始に伴う語としての漢字の同定(同字・別字の認識)の形成過程を精密に跡付けるものである。 最終年度に当たる今年度は、1) 宣教に伴う言語学関連の文献原本調査を分担して行なった他、過去の調査で集積した書誌学的・文献学的な記述の取りまとめを行なった。2) 調査・増補した文献資料類の多言語データベース(DB)の拡張を進める過程で、相互の自動検索を行なって、正書法の異なり(正書法の不在)によって対応が取れない別綴りの同語のリンクを取るべく、綴字同一視の参照表の整備を進めた。これによって、DB検索時にユーザが様々な綴りで検索しても当該項目にヒットする様に改善する事が出来た。3)日本キリシタン版漢字仮名行草体金属活字のレパートリを確定させ、前期・後期キリシタン版を通しての漢字用法が通覧出来る様になった。4)以上のDB整備に基づいて、文字・語彙に関する論考数点を準備し、国内研究会・国際学会にての発表(一部予定)の他、来年度以降に、本格的に取りまとめた研究発表を準備している。 尚、昨年度(平成25年度)、本研究を基礎として刊行した豊島正之編「キリシタンと印刷」(八木書店)が、今年度5月(平成26年5月)に第35回日本出版学会賞を受賞し「世界中に類書のまったくない内外研究者必携の書であり,出版研究に対する功績はきわめて大きい。」との評価を得た事を付記する。
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