研究課題/領域番号 |
23320099
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大津 由紀雄 慶應義塾大学, 言語文化研究所, 教授 (80100410)
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研究分担者 |
今西 典子 東京大学, 人文社会研究科, 教授 (70111739)
稲田 俊明 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (80108258)
池内 正幸 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (20105381)
杉崎 鉱司 三重大学, 人文学部, 准教授 (60362331)
磯部 美和 東京芸術大学, 言語・音声・トレーニングセンター, 助教 (00449018)
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キーワード | 言語機能 / 認知体系 / インターフェイス / 言語獲得 / 進化生成言語学 / 言語教育 |
研究概要 |
1 認知体系内で言語機能が感覚・運動体系(SM)と概念・意図体系(CI)との2つのインターフェイスを介して他の認知体系とどのように働きあって言語の普遍性と多様性をもたらしているのかを普遍文法と言語獲得機構および言語処理機構の係わりを検討することにより解明するという研究課題を設定し、本年度はロマンス諸語およびゲルマン諸語の名詞句内照応(主要部が音形を欠く名詞句表現)の特性について考察した。 言語運用からの要請や文法のインターフェイスの重要性を示す事例を中心に研究した。特に、会話に見られるいわゆる「簡略表現」の統語構造と意味の問題を調査することにより、言語運用からの要請が文法をどのように最適化しているかを示した。 2 言語機能研究における否定極性表現の位置づけについて検討を開始した。 3 心のモジュール性に関わる最新の研究動向を精査し、言語機能を構成する「組み合わせる」能力を中心に、他の認知機能との共通点および相違点を検討するとともに、ヒトと他の生物種との比較という観点から種固有性を検討した。 4 ヒトの言語機能の中心的性質と考えられている「移動」に関して、その獲得過程に関する詳細な分析を実施した。具体的には、英語のYes/No疑問文、日本語の自由語順、および日本語の「なぜ」を含むwh疑問文を対象に分析を行い、移動及びその制約を司る生得的属性の早期発現に対する、言語獲得からの新たな証拠を提示した。日本語を母語とする幼児に対し、関係節や遊離数量詞に関する知識を調査するための実験を行った。 5 進化生成言語学研究の方法論について、研究の現段階では、反証主義と共に、いわゆる「妥当性」もその基準として有用かつ必須であることを示した。また、UGの創発について、通例5万~7万年前とされているのに対して、最近の考古学研究の成果と、 6 研究成果を言語教育に利用する方法について検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個別の研究も、全体の統合も、ほぼ予定どおり進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、(1)言語機能の性質(他の心的モジュールとの相互作用を含む)、(2)言語獲得の仕組み、(3)言語機能の起源と進化、(4)研究成果の言語教育への貢献の4つを主要な個別課題とし、その推進とともに、そこでの研究成果を可能な限り、心と脳についての統合された見通しのなかに位置づける努力を続ける。
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