研究概要 |
平成23年度には,目的Iの論文・レポートの構造分析において,既有データの分析を継続して問題のあぶり出しを行い,特に文学・教育学分野の論文コーパスを拡充した。さらに,3月の専門日本語教育学会等において分析結果を報告し,同時に研究集会を開催し,進捗状況を確認しあい,分担体制を整理した。看護分野の論文読解・作成支援教材を作成した。 目的IIのニーズ調査については,情報収集・文献調査を通じて調査の枠組みと調査項目を設定した。プレ調査として国内の専門教員,海外の日本語教員,国内の留学生,帰国留学生等に対してインタビューを行い,データを文字化して,グループ別に分析に着手した。さらにグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)による質的分析の手法についての研究会を実施し,各グループで手法を共有しつつ,インフォーマントのニーズ・困難点の抽出を進めている。海外の現場でも,探索段階のインタビュー調査に着手した。既にいくつかの調査グループでは,中間段階の学会発表を準備中である。 目的IIIのネットワーク構築に関しては,過去に培った海外の日本語教育人脈の中から本共同研究への賛同者(海外の日本語教育従事者)を2月上旬に東京海洋大学および東北大学での研究討論会に招聘し,研究計画に関する議論を行ったほか,同時に相互の情報交換や他の機関も含めた情報収集・資料収集を進め,得た情報の文字化も行った。研究討論会での話し合いの成果は,今までになく多岐にわたり,特に海外の現場の現状を知ることにつながり,今後の調査項目の詳細化に大いに反映されている。また,福岡・仙台・室蘭の分担者の所属機関においても,海外・国内の協力者を招聘して日本語教育現場の情報を共有し合い,ネットワーキングを強化した。既に24年度のパネル共同開催に向けて準備に入っている。このほか,国内の情報関連学会や研究討論会において,教育手法の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年11月に追加採択されたため,準備・研究期間が非常に短かったにもかかわらず,特に海外在住研究協力者の尽力により,2~3月での研究討論会や調査において,期待以上の具体的・詳細な情報が得られ,年度内および次年度の情報発信や調査の拡大にもつながったことから,(1)と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度8月に名古屋で開催される日本語教育国際大会に応じて,本研究課題に関連して,パネルやポスター発表など,複数の情報発信を行う(採択済)ので,年度前半はこれらに注力する。また,協力者の多くが集まることから,次年度以降のネットワークの維持について具体的に検討する。同時に,前年度に詳細化することができた調査項目をもとに質的調査を進め,共同研究者同士の分析への相互協力の機会を持ちながら,分析を持続する。論文・レポートのコーパスの拡充と,新たな分析をさらに進める。
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