研究分担者 |
宮岡 弥生 広島経済大学, 経済学部, 教授 (10351975)
時本 真吾 目白大学, 外国語学部, 教授 (00291849)
酒井 弘 広島大学, 教育学研究科, 教授 (50274030)
杉村 泰 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (60324373)
林 〓情 山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (30412290)
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研究概要 |
平成23年度は,脳科学実験を通して,超級学習者の文処理過程が母語話者とどのように異なるかを解明するために,脳波(EEG)実験が実施できるための環境を整えた。脳波計は,オランダのBioSemi社製のActive Two Systemデジタル脳波計32チャンネルおよび周辺機器など一式を購入し,名古屋大学内にある実験室に設置した。また同時に,脳波測定に関する研修も受けた。さらに,EEGのデータ分析のために,ドイツのBrain Products社のBrainVision Analyzerを購入して,分析方法を検討した。まず,日本語母語話者に対してアクセント知覚の実験を行った。たとえば,「現在,この川に橋を建設中です。」の「橋」のピッチアクセントはLHである。しかし,これをHLとすると,「箸」の意味になり,「現在,この川に箸を建設中です。」となる。日本語母語話者がこの違のを正しく区別しているかどうかを,脳波で測定した。その結果,正しい発音の「橋」と比べて,「箸」の場合には意味逸脱を示すN400が観察された。以上のように,新しく設定した脳波測定装置が正しく機能していることを確認できた。平成24年度は,中国語と韓国語の超級日本語学習者に対して,日本語の多様な文および文構造の処理を脳波を使って検証していく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
超級の日本語学習者に関する日本語文処理過程を考察する際の基準となる日本語母語話者を対象として,23年度に,行動実験,眼球運動測定,およびERP実験を実施した。24年度には,これらの結果を踏まえて,予定通り日本語学習者を対象とした実験の実施に進むことができる。さらに,日本語学習者および母語話者の日本語理解に関して,論文や学会発表等本23年度に多くの成果を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
長年日本に滞在している超級日本語学習者に対して,日本語の多様な文型の正順とかき混ぜ語順の文正誤判断課題を実施する。日本語母語話者のデータと比較して,超級学習者と母語話者の文処理方略の違いを文処理時間と正答率で比較検討する。母語と日本語の語順が異なる中国語,および母語と日本語の語順が同じである韓国語母語話者を対象とすることで,文構造の処理過程において母語の影響があるか否かを検討する。このために,能動文,受動文,可能文における正順・かき混ぜ語順の刺激文を用いる。次に,日本語学習期間,カリキュラム,日本語能力と条件が一定であっても,可能文の正順とかき混ぜの正答率に個人差が認められるという報告(玉岡,2005)を受け,日本語文の処理における学習者の個人差も検討する。ここから,母語による違いという要因と個人差の要因の2つがどのように関わっているかについて考察する。
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