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2012 年度 実績報告書

超級学習者は母語話者と同様に日本語文を処理しているか―行動・脳科学実験による解明

研究課題

研究課題/領域番号 23320106
研究機関名古屋大学

研究代表者

玉岡 賀津雄  名古屋大学, 国際言語文化研究科, 教授 (70227263)

研究分担者 時本 真吾  目白大学, 外国語学部, 教授 (00291849)
宮岡 弥生  広島経済大学, 経済学部, 教授 (10351975)
林 ひょん情  山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (30412290)
酒井 弘  広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50274030)
杉村 泰  名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (60324373)
研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2014-03-31
キーワードかき混ぜ語順 / 事象関連電位 / 超級日本語学習者 / 能動態・受動態 / 漢語サ変動詞 / のが交替 / 名詞句 / 異言語間の語彙活性化
研究概要

本研究は,超級日本語学習者が複雑な文構造をどのように処理しているかについての全体像を解明することを目的とする。まず、事象関連電位(ERP)実験の予備実験としては、中国語を母語とする超級日本語学習者を対象にして、日本語の文の中に、中国語で意味をなす語を埋め込んだ場合の自動的な活性化について検討した。その結果、日本語の文を処理している間にも、中国語の語が活性化されていることが分かった。超級日本語学習者であっても、母語の語が提示されると、その語が日本語に存在しない中国語であっても、自動的に意味にアクセスする様子がみられた。今後、より詳細な母語の語彙の活性化について検討する。さらに、平成24年度には,日本語の多様な文型の正誤判断課題実験を行い,事象関連電位(ERP)実験を行う基礎づくりをした。具体的には、文正誤判断課題に用いる実験刺激文を選択し,さまざまな行動実験を実施した。(1)韓国語を母語とする超級日本語学習者に対して、漢語サ変動詞の理解における韓国語の影響についての実験を行った。日韓で、能動態と受動態の対応関係は一致しているわけではなく、両言語に存在する品詞や動詞語尾のずれに対して,韓国人日本語学習者が日本語の文を処理する際にどう対応しているかを検討して、さらにERPの実験へとつなぐ準備ができた。同様に、(2)中国語を母語とする超級日本語学習者に対して、漢字二字から成る漢語サ変動詞の使用において、能動態と受動態とで日中で共通に使用されるものとそうでないものを比較検討した。(3)中国語と韓国語を母語とする超級日本語学習者に対して、「の」「が」交替の名詞句の処理に関する行動実験を行った。韓国語では、これに類する統語構造が存在するが、中国語には存在しない。超級日本語学習者であっても、母語の微妙な統語上の違いが日本語の処理に強く影響すると予想され、実際そのような結果を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

中国語を母語とする超級日本語学習者が、日本語の文の中に、中国語で意味をなす語を埋め込んだ場合に、それを自動的に活性化することをERPで確かめた。超級日本語学習者であっても、日本語に存在しない中国語であっても、自動的に意味にアクセスするようである。このことは、中国語母語話者は日本語と同じ漢字表記を共有しているために、学習対象の日本語のレベルが上がっても中国語の語を容易に活性化してしまうことを示した。しかし、この実験はまだ詳細の検討の余地があり、さまざまな同義語・類義語を使って実験を続ける予定である。また、超級日本語学習者のERPを使ったオンラインでの文処理実験を行うために、漢語サ変動詞を文に含んだ場合の文処理の行動実験、能動態・受動態の言語間の違いを検討した行動実験、複雑な名詞句の構造を検討した行動実験を行い、母語の影響についての結果を得た。今後、これらの母語と日本語との違いが、超級日本語学習者の日本語の処理にどのくらい影響するかをERPの実験で明らかにしていく準備ができた。

今後の研究の推進方策

最終年度となる平成25年度には,本格的にERP 実験を実施する。二言語間の干渉は、日本語習得の重要な要因である。そこで、干渉について検討するために、以下の4つのERP実験を予定している。(1)日中および日韓の類義語・異義語が日本語の文中に埋められた処理において、実際に母語の語彙が活性化され、それが日本語の処理に干渉するかどうかを確かめる。平成24年度の予備実験では、ある程度その傾向がみられたものの、より詳細に語彙の種類を統制して実験する必要がある。(2)韓国語を母語とする超級日本語学習者に対して、能動態と受動態を示す漢語サ変動詞を含む文処理における韓国語の影響について検討する。(3)中国語を母語とする超級日本語学習者に対して、漢字二字から成る漢語サ変動詞の使用において、日中で共通に使用されるものとそうでないものを比較検討する。(4)中国語と韓国語を母語とする超級日本語学習者に対して、「の」「が」交替の名詞句の処理について検討する。(5)中国語および韓国語を母語とする超級日本語学習者が日本語には敬語表現における主語と動詞の関係 (「社長」に対して「おっしゃる」)をオンラインで迅速に処理できるかどうかを検討する。以上のように、前年度までに実施した行動実験と,ERP実験の2つの側面から結果を統合し, その成果を国内外の学会で発表し国際学術誌に投稿する。また, ワークショップを開催し日本語学習者や日本語教育関係者に成果を紹介する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] The effects of visual complexity for Japanese kanji processing with high and low frequencies2013

    • 著者名/発表者名
      Tamaoka, K., & Kiyama, S
    • 雑誌名

      Reading and Writing

      巻: 26(2) ページ: 205-223

  • [雑誌論文] Pre- and post-head processing for single- and double-scrambled sentences of a head-final language as measured by the eye tracking method2013

    • 著者名/発表者名
      Tamaoka, K.
    • 雑誌名

      Journal of Psycholinguistic Research

      巻: online first ページ: 1-14

    • DOI

      10.1007/210936-013-9244-8

    • 査読あり
  • [雑誌論文] How do native Chinese speakers learning Japanese as a second laguage understand Japanese kanji homophones?2012

    • 著者名/発表者名
      Tamaoka, K.
    • 雑誌名

      Writing Systems Research

      巻: 4 ページ: 30-46

    • DOI

      10.1080/17586801.2012.690008

    • 査読あり
  • [学会発表] How far can ‘long-before-short’ preference go beyond canonical order in Japanese?2013

    • 著者名/発表者名
      Tamaoka, K.
    • 学会等名
      The 26th annual CUNY Sentence Processing Conference.
    • 発表場所
      Columbia, South Carolina, the U.S.
    • 年月日
      20130321-20130323
  • [学会発表] Bi-Mora Frequency Versus Linguistic Constraint: ‘Whack-A-Male’ Effects on the Processing of Japanese Nonwords2012

    • 著者名/発表者名
      Tamaoka, K.
    • 学会等名
      The 53rd Annual Meeting of Psychonomic Society
    • 発表場所
      Minneapolis, Minnesota, the U.S.
    • 年月日
      20121118-20121121
  • [学会発表] Differences in comprehension strategies for discourse understanding by native Chinese and Korean speakers learning Japanese2012

    • 著者名/発表者名
      Tamaoka, K.
    • 学会等名
      AMLaP 2012: Architectures and Mechanisms for Language Processing
    • 発表場所
      Riva del Garda Fierecongressi Conference Center, Riva del Garda, Italy.
    • 年月日
      20120906-20120908
  • [学会発表] 中国人日本語学習者の学習様式による語彙力,文法力,読解力,聴解力の予測2012

    • 著者名/発表者名
      玉岡賀津雄
    • 学会等名
      2012年日本語教育国際研究大会
    • 発表場所
      名古屋大学, 愛知
    • 年月日
      20120817-20120820
  • [備考] http://www.lang.nagoya-u.ac.jp/~ktamaoka/

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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