研究課題
超級の日本語学習者は,日本語学習がほぼ達成されているとみなされ,従来彼らの文理解の過程は網羅的に検討されなかった。しかし彼らは,日本語能力が高い分,日本語を用いてより複雑で高度なコミュニケーションを行っており,周囲からの期待も高いと思われる。もし超級学習者が複雑な文やそのかき混ぜ語順の理解が母語話者ほどには十全ではないとすると,彼ら自身もその周囲も予期しなかった誤解が生じ,活動の目的が達成できない恐れが出てくる。本研究課題では,心理言語学の行動実験を通して,超級日本語学習者が日本語の多様な文の構造を正確かつ円滑に処理しているかを明らかにすることを目的とした。さらに,脳科学実験を通して,超級学習者の処理過程が母語話者とどのように異なるかを解明し,彼らの十全なコミュニケーションの実現に貢献することを目指した。日本に留学して大学および大学院で学んでいる超級日本語学習者が,母語の影響を受けながら複雑な構造の文をどのように処理しているかを考察することを目的とした。中国人日本語学習者が,統語情報の異なる日中同形同義の漢語動詞と形容詞をどのように処理しているかを,句正誤判断課題による反応時間,正答率およびERPを測定して観察した。日中両言語で漢語の統語情報が不一致の場合は一致する場合より反応時間が長く,正答率も低かった。したがって,同形同義の漢語の処理において,処理対象の言語と関係なく日中両言語のレキシコンの統語情報が活性化されると考えられる。つまり,バイリンガルの非選択的語彙アクセスは,統語情報へのアクセスにまで及ぶことが分かった。超級に達した日本語学習者であっても,母語の中国語と同形同義語が日本語で提示されると,その語が日本語に存在しない中国語の統語情報であっても,非選択的・自動的に統語情報にアクセスしてしまい,誤った判断を誘発することが明らかになった。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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