研究課題/領域番号 |
23320117
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
高田 智子 明海大学, 外国語学部, 准教授 (20517594)
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研究分担者 |
伊東 治己 鳴門教育大学, 学校教育研究科, 教授 (90176355)
尾関 直子 明治大学, 国際日本学部, 教授 (00259318)
松沢 伸二 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (90207043)
緑川 日出子 昭和女子大学, 人間文化学部, 非常勤講師 (10245889)
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キーワード | 英語 / 教育学 / CEFR / ELP / autonomy / agency |
研究概要 |
(1)ポートフォリオ的アプローチの指導理念の中心となるagency(社会的文脈の中で自発的に行動する能力)について精査した。文献調査を進めるほか、フィンランドのユバスキュラ大学Paula Kalaja教授に面会しagencyと学習者ビリーフとの関係について教示を受けた。「自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視」する教育基本法の下で、agencyという概念を日本の学校教育に適用する意義を確認した。 (2)タンペレ大学Viljo Kohonen名誉教授より、言語理論と教育理論を融合した外国語教育、およびCEFRの理念であるautonomy,authenticity,agencyに関して教示を受けた。これらは今後構想する指導モデルの基幹となる重要な概念である。 (3)鳴門教育大学国際学術研究員Seppo Hamalainen教授、同外国人客員研究員Anneli Sarja教授より、低学習意欲の生徒に対する指導のあり方に関して教示を受けた。 (4)アネコスキ市アネコスキ小学校、ユバスキュラ市ユバスキュラ大学付属中・高等学校、タンペレ市レンタバニエミ小学校、ハメリンナ市タンペレ大学付属小学校において授業見学を行なった。授業記録を分析して自律を育成する教師の行動の特徴を抽出した。これは指導モデル構築に向けた基礎研究と位置づけられるものである。 (5)ポートフォリオ的アプローチを実践するUrsula Viita-Leskela教諭(ヘルシンキ大学付属小学校)、Eeva Regan教諭(タンペレ市キサンマ小学校)の授業を見学し、協同学習、自己評価、相互評価の実態を観察し児童のポートフォリオを閲覧した。両教諭から本アプローチの目的・手順の説明を受けたほか、教員研修会での配布資料や自己評価表の提供を受けた。フィンランドでは欧州評議会が認定する言語ポートフォリオが存在しないため、その代替機能を果たす関連資料から、理論と実践の結びつきを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィンランドのポートフォリオ的アプローチの実態調査は、2度の現地視察および海外研究協力者の情報提供によりほぼ達成している。学習の自律に関する質問紙調査を予定していたが、agencyの概念を精査する過程で、定量分析により得られる成果が限定的であることが判明したため、授業担当者への面接調査によりデータを収集した。
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今後の研究の推進方策 |
経験学習の理論的枠組みを援用し、ポートフォリオ的アプローチを日本の既存のシラバスに応用する場合の(1)指導法、(2)教室活動とその形態、(3)生徒の役割と教師の役割、(4)評価、を検討する。「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策」は、各中学・高校は到達目標を「CAN DOリスト」の形で設定することを求めている。設定した到達目標に向けた学習を成功させるためには、経験⇒省察⇒概念化⇒実践というサイクルを学習の中核とする、経験学習の枠組みに依拠したポートフォリオ的アプローチの適用可能性は高い。25年度にパイロット研究を開始できるよう、中学・高校の現職教員を対象にワークショップを開き、現場の実態を把握しつつ実現可能な実施のありかたを検討する。
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