研究課題/領域番号 |
23320118
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
アレン・玉井 光江 青山学院大学, 文学部, 教授 (50188413)
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研究分担者 |
太田 洋 駒沢女子大学, 人文学部, 教授 (30409825)
本田 勝久 千葉大学, 教育学部, 准教授 (60362745)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 小学校英語教育 / 小・中連携 / 初期リーディング指導 / 初期リーディング理論 / アルファベット知識 / 音韻認識能力 / 音声言語と文字の発達 |
研究概要 |
研究の目的: 本研究は日本人の初期学習者(小学校高学年および中学1、2年)がどのように英語のリタラシー能力を獲得するのか、それに関する理論を構築し、その理論に基づいた効果的なリタラシープログラムを開発し、更にそれを公立小を対象としたリタラシー習得に学校、中学校で実践することを目的としている。 研究概要: 研究に参加していただいている小学校で、昨年度は5年生を対象に実験を行ったが、今年度は6年に進級した同じ児童を対象に実験を継続した。形態は昨年同様、学級担任と研究代表者のチーム・ティーチングで、リタラシー能力を伸ばすためにボトムアップおよびトップダウン的指導を行った。レッスンプランおよび教材一式は全て研究代表者が作成した。さらに新しく新5年生には研究代表者が指導しているゼミ学生がボランティアとして参加し、昨年研究者が開発したプログラムを実施した。2年目を迎えたプログラムの目標は、(1)アルファベット小文字の習得、(2)フォニックス指導、(3)文章レベルでの読み書き指導、(4)ストーリを使ったホール・ランゲージ的な指導であった。 今年度も引き続き指導の効果を測定するため様々なテストを実施した。参加した児童や学級担任等の意識などもインタビューやアンケートによって調査を進めた。研究分担者は1ヶ月に1回、当該授業を見学し、授業検証を行った。 また中学校との連携に関する研究として、定期的に授業を見学し、英語教員と中学校1年生の指導について議論を重ねた。その結果、初期段階における英語学習者の「音と文字との関係」を理解する力がその後の英語学習に大きな影響を及ぼすことが確認された。また、研究分担者は昨年に引き続き中学校1年生を対象にアンケートを実施し、特にリタラシー指導と英語学習の関連性について探った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年に引き続き研究に参加していただいている小学校では研究代表者が開発したリタラシープログラムを導入し、2年間のプログラムの効果を検証することができたが、これは協力していただいている小学校の先生方のご理解とご協力のお陰であり、深く感謝するところである。 2年間の指導により、ボトムアップのスキルであるアルファベットの大文字、小文字の習得が十分なレベルに達したことがわかった。音韻認識能力に関しても、メタ言語的な処理が可能になり、ただの音素の違いを理解するところから、分節(segmentation)能力、混合(blending)能力、また音素を削除、追加するなどの操作(manipulation)能力が伸びたことがわかった。しかし、音素と文字を結びつける段階になるとまだ半数の児童が十分に応用する力をつけていない状態であった。これは指導時間が限られていること、また小学校6年生の認知発達によるところだが、当初より想定されていた結果であった。 トップダウン的な指導としては物語を使用した指導を続けた。5年生はGoldilocks and the Three Bears、6年生はJack and the Beanstalkを題材として選んだが、最初は多量の英語に接し戸惑っていた児童であったが、時間がたつにつれ、学習した英語を自分のものとするlanguage ownershipが見られ、児童は曖昧性に耐える力を獲得していった。ホールで英語を習得する機会を得ることで、単語レベルから文レベルへのdecoding skillsを伸ばし、統語や形態素に対しても興味を示し、grammatical awarenessを高めていった。学年末のアンケートからも、このような過程を通して児童が自律した学習者に成長していく姿をみることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究が計画通りに進んでいるので、それぞれを継続、発展させて、研究を続ける。具体的には小学生を対象とした研究は3年目を迎え、5、6年生を対象としたプログラムを継続させ、今までどおり様々なテストやアンケートなどを通して児童のリタラシー能力の実態を把握していく。また、今までの研究から彼らの動機の変化や学習の自立(律)性の発達をもう少し詳しく見る必要性があると思われるので、授業用の「振り返り」ノートを改良し、毎回の学習の変化を見ていくことにする。 さらに、研究に参加していた児童が中学校へ進学するので、彼らを追跡調査する新規の研究を予定している。具体的には小学校段階で意識的なリタラシー指導を受けていた生徒とそうでない生徒の間に中学校入学時と1学年終了時に英語のリタラシーにおいて差があるのかどうかを個別のインタビューと能力測定からみていこうと考えている。また中学校1年生を対象に今まではリタラシーに関するアンケートだけを実施していたが、それに加え、英語のスキルを測るテストを入学時と1学年終了時に実施する予定である。そうすることで、小学校研究でも調査している音韻認識能力とリーディング能力の発達についての検証を行う。 今年度の中学校教員との話し合いから、初期段階において「音と文字との関係」を今まで以上に丁寧に時間をかけて指導するように来年度はカリキュラムを改良することになった。中学校教員と連携し、必要とあれば助言、指導を行いながら、この試みをサポートしていく予定である。
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