研究概要 |
1.司法コーパスの構築 当初はイギリスとアメリカの最高裁判所の判例を50万語ずつ収集しコーパスを構築する予定であったが、分析の精度を向上させるためにコーパスのサイズを2倍以上に増強し、イギリスの最高裁判所判例1,242,656語、アメリカの最高裁判所判例1,139,952語をコーパス化した。更に英米の大学院における法律家養成課程の実態に鑑み、新たにローレビューのコーパスを構築することとし、イギリスの代表的なロージャーナルを1,135,346語、アメリカのロージャーナルを1,141,299語コーパス化した。これによって司法英語の調査対象が大きく広がることとなった。 2.司法の専門語義で使用されている一般英語の抽出 いくつかの英和辞書でパイロット調査を行い、最終的にはOxford English Dictionary(1989)でlaw useと表記されている全ての語2806語とそこで提示されている3183の司法の専門語義を抽出した。これによって一般英語が司法の専門語義で使用されている語が、歴史的スパンで収集され、通時的、共時的語彙データが獲得されたことになった。 3.専門知識の収取 北京で開催された国際応用言語学会、京都での英語コーパス学会、本研究テーマに直結した数多くの研究会へ参加し、最近のコーパス言語学の動向や辞書研究の世界的な流れを把握し、本研究の意義と必要性と先進性を確信した。ランカスター大学では最先端の研究者の協力を得て本研究に必要なコーパスの構築方法の教授を受け、ケンブリッジ大学では法律学や司法関係者、法律英語の教育に携わっている同大学の付属機関の教員関係者と意見交換をし、本研究を今後の進め方や辞書化に向けての貴重な助言を得た。 4.活用発信型辞書の記述モデルの確定に向けての調査研究 コーパスを基に辞書を編集に携わっている研究者、辞書編集家、関連分野の研究者との意見交換をし、辞書における具体的で有効な提示方法、その背後にある言語学の諸理論の習得に努めた。その結果、どのようにして本研究の成果を辞書として具現化してゆけるのか、どのような提示方法が可能なのか、どのような提示方法が有効なのかがより明確になってきた。
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