研究課題/領域番号 |
23320119
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
鳥飼 慎一郎 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (90180207)
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研究分担者 |
溜箭 将之 立教大学, 法学部, 准教授 (70323623)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 司法英語 / コーパス言語学 / イギリス最高裁判例 / アメリカ最高裁判例 / ロージャーナル / 専門語義 / 一般語義 / コロケーション |
研究概要 |
当該年度の研究テーマは、司法英語における類義語がどのようにして司法英語で使い分けられているのかを、コーパス言語学の観点から調査分析をし、これから英語圏の大学院で法律なり司法制度なりを学ぼうとしている日本人学習者が司法英語を学習するための一助とすることにあった。 司法英語では、一般英語学習者から見て区別するのが難しい複数の専門用語が専門的な意味の違いによって使い分けられている。その1例が、judgment、decree、verdict、ruling、orderといった、司法当局が発する拘束力のある決定を意味する専門用語である。『英米法辞典』(1999)やBlack’s Law Dictionary(2009)などの専門用語辞典では、これらの専門用語の語義あるいはその専門的な背景は説明されているものの、これらの専門用語をどのような語彙文法的コンテクストの中で使用すればよいのかの説明はない。 一方、我々が構築した司法英語コーパスによれば、これらの専門用語の使用実態は、judgmentに限ってみても以下の通りである。 judgment 判決 UK2008JD (856.5/mil) give judgment (81) make judgment (18) deliver judgment (22) lead judgment (20) (only/closely/carefully) reasoned judgment (11) このような語彙文法的な情報があって初めて、英語を外国語として学び、使用する日本人学習者は、これらの専門用語を正しく司法英語のコンテクストの中で使用できるのである。このような情報こそが我々が目指す「活用発信型の司法英語辞典」が目指すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2013年度は極めて研究が前進した年度であった。 1.念願であった契約書のコーパスが完成した。2.司法英語における専門性の高い類義語がどのように語彙文法的に使用されているのかをコーパス言語学的観点から研究ができた。3.英語コーパスの専門学会である「英語コーパス学会」で研究発表をし、辞書学の専門家から専門的知見と助言を得られた。4.これまでの研究成果を、『Legal Minds: 15 Journeys in Law』という司法英語専門の英語の教科書にまとめ、出版することができた。5.オーストリアのグラーツ大学の元教授のDavid Newby博士とお会いし、司法英語などのESP教育を今後CEFR等の枠組みの中でどう展開していったらよいのか意見交換をした。Newby博士には2014年度6月に立教大学に招聘研究員として来日していただき、連続5回の公開講演会などを通して、CEFRとESPとの関連も含めて講演をしていただくことになっている。6.フライブルグ大学のChristian Meir博士とお会いし、お互いの研究成果について意見交換をした。Meir博士は移民の言語に関して研究をしており、日本人学習者が海外のロースクールで学習する際の言語環境と共通点があり、参考になった。7.北アリゾナ大学のFredricka Stoller教授、William Grabe副学長とお会いし、我々の司法英語の発信型辞書の開発に関して、応用言語学の観点から専門的な知見と助言を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、司法英語の構文の研究に着手する。英語では類似の意味を伝えるのに類似の構文構造を使用することがしばしばある。司法英語ではこの傾向が強く、同じ文構造内で使用する専門用語を替え、基本的には同じ命題を表現していることが多い。このような事例に多数遭遇すると、意味を生み出すのは語彙であり文構造はそれを並べるだけの役割を果たすのか、あるいは文構造が意味の基底を構築し、その構造に合うべき語彙を選択しているのか、議論が分かれるところである。この点について、構造文法の観点から司法英語コーパスを駆使して、文意と文構造の関連性を研究していく予定である。近研究成果は、発信型辞書を編集するに当たり、司法英語をカテゴリー化するのに寄与するものと期待している。
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