研究課題/領域番号 |
23320124
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
門田 修平 関西学院大学, 法学部, 教授 (20191984)
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研究分担者 |
中西 弘 東北学院大学, 文学部, 准教授 (10582918)
氏木 道人 関西学院大学, 理工学部, 講師 (20369680)
中野 陽子 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (20380298)
野呂 忠司 愛知学院大学, 文学部, 教授 (40218376)
長谷 尚弥 関西学院大学, 国際学部, 教授 (50309407)
風井 浩志 関西学院大学, 理工学研究科, 専門技術員 (80388719)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | NIRS(近赤外線分光法測定装置) / 光トポグラフィ / シャドーイング / リスニング / 内的リハーサル / 第二言語としての英語 |
研究概要 |
本研究は、NIRS(近赤外線分光法測定装置[near-infrared spectroscopy])<光トポグラフィ>を用いて、第二言語(外国語)としての英語におけるシャドーイングの脳内処理プロセスの解明、さらにはシャドーイングにより、自動化した流暢な語彙処理・統語処理過程の脳内処理プロセスの解明を目的としたものである。特に、2012年度には、次の2つの目的を設定した。 (1)外国語としての英語におけるシャドーイング、リスニング、内的リハーサルを伴う黙読(silent reading)時の脳活動がどのような脳内処理の実態を呈しているか検証する。 (2)内的リハーサルを伴う黙読(silent reading)時の脳活動が、英語シャドーイングと英語リスニングの繰り返しによりいかに変容するか検討する。 主たる結論は次の通りであった。 (1)シャドーイングタスクの場合は、内的リハーサルを伴う黙読よりも、脳活動量(酸化ヘモグロビン量)が増大する。しかしながら、リスニングタスクではこのような増大は見られない。(2)すべてのチャンネルにおけるシャドーイングとリスニングの脳活動量を比較すると、シャドーイングのほうが明らかに大きい。(3)左運動野付近(BA3)において、シャドーイング後の内的リハーサルを伴う黙読の方が、リスニング後よりもその脳活動量が大きい傾向がある。(4)左運動野付近(BA3)において、シャドーイング後の内的リハーサルを伴う黙読の方が、リスニング後よりも、SD(標準偏差)が小さく安定している傾向がある。(5)左前頭連合野において、リスニング課題遂行時の脳活動量が大きく落ちるが、左聴覚野付近ではリスニング時の脳活動量が落ちない。これらの領域において、シャドーイング課題遂行時では、脳活動量は有意に増大している。 しかしながら、上記の結論の確定にはさらに詳細な検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の推進状況については、実験1(なぞり読みによる内的リハーサルの行動実験)の研究成果を米国で学会発表したことを受けて、実験2(近赤外線分光法測定装置[NIRS]による脳内処理実験)において得られたデータの集計・解析にかなりの時間を費やした。その結果、ほぼ成果が確定できるところまで到達した。シャドーイングの効果に関するNIRS計測方法について確立できたことは、我が国でも極めてパイオニア的な成果であり、その結果28名分の計測データの処理をほぼ完了できたことの意味は大きいと思われる。 さらに、上記実験1行動実験についてその後、内的リハーサルを伴う黙読時やシャドーイング時の脳活動データ、および英語Placement Testなどとの結果の相関分析を完了して2012年夏に学会報告を行った。これについてもほぼ満足できる成果であると考えている。 また、NIRSを使った実験2(脳内処理実験)の成果発表については、今後、英語教育に関連した国内学会や、AILA(国際応用言語学会)でのシンポジウム発表等を実施して、シャドーイングの効果について、さらにその成果を発表していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
第二言語としての英語における顕在知識(explicit knowledge)と潜在知識(implicit knowledge)の関係については、従来より第二言語習得研究における中心的なテーマの一つである。これについて、今後、顕在知識にもとづく処理(制限的処理:controlled processing)は、潜在知識にもとづく処理(自動的処理:automatic processing)にいかにして変貌するか、シャドーイングとの関連で、検討したい。 これまでの、記憶についての認知心理学的研究の成果は、(a)顕在記憶(宣言記憶)と潜在記憶(手続き記憶など非宣言記憶)が区別できること、(b)エピソード記憶の意味記憶化が、脱文脈化(decontextualization)により達成されること、(c)意味記憶の潜在記憶化は反復(直接)プライミングによるニューロンネットワークの再構築(restructuring)により達成されることを明らかにしている。 そこで、学習タスクとしてのシャドーイングとリスニングは、上記の潜在記憶化にいかなる影響を与えるかについて実験的に検討する。特に、次の諸点に注目する。 (1)顕在知識と潜在知識の心理的実在はどのようなものか? (2)シャドーイング、リスニングのトレーニングが、顕在知識、潜在知識にいかなる影響を与えるか? 以上の検討を行うことで、第二言語としての英語の習得における顕在学習と潜在学習のメカニズムについて、その認知的実態が明らかになると期待できる。
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