研究課題/領域番号 |
23320127
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
周藤 芳幸 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (70252202)
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研究分担者 |
内田 杉彦 明倫短期大学, 歯科衛生士学科, 准教授 (00211772)
中野 智章 中部大学, 国際関係学部, 准教授 (90469627)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 文化変容 / ヘレニズム / エジプト / 東地中海 / プトレマイオス朝 |
研究概要 |
当該年度は、プトレマイオス朝支配下のエジプト領域部の文化変容を明らかにするために、特に物質文化の変化に注目して研究を行った。中エジプトのアコリス遺跡では、1997年から2001年にかけて行われた発掘調査に際して、ヘレニズム時代の豊富なギリシア系遺物を包含する文化層が検出された。中でも重要なのは、在地社会と首都アレクサンドリア、さらには東地中海世界との交易関係を示す地中海系のアンフォラの破片が大量に出土したことであるが、これについては2005年に英文の報告書を刊行し、その成果が国際的に評価を受けているものの、それらと他の土器との関係などについては、手付かずになっていた。そのため、当該年度は二回にわたって公開研究会を開催し、土器、皮革、石材加工などの専門家から知識の提供を受けつつ、物質文化の変容の実態解明に向けた研究を行った。その結果、アコリスにおける土器の型式変化が、エレファンティネなど他遺跡におけるそれとかなり良好な対応関係を示すことなど、該期の文化変化に関して画期的な知見が得られた。また、本年度には、物質文化の変容に関するこの成果を含め、これまでの研究期間に得られた成果を著書としてまとめるための準備作業も行った。その過程では、アコリス磨崖碑文の歴史的背景を明らかにするため、プトレマイオス4世の治世末年に勃発したいわゆる南部大反乱について研究を行い、その成果を論文として発表した。さらに、中エジプト各地の採石場の状況についても中間的な報告をまとめ、合わせてギリシアにおいて資料調査を行うことで、それらの知見をプトレマイオス朝史の再構成に役立てるための情報を蓄積することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プトレマイオス朝史支配下のエジプト在地社会の文化変容と、その歴史的な背景について物質文化と文字史料(特に採石場に残されているギリシア語とデモティックのグラフィティ)の両面から研究を行い、その成果を着実に公刊している。当該年度は、学術論文1点にとどまるが、これは現在、最終年度に向けてこれまでの成果を『ナイル世界のヘレニズム』と題するモノグラフにまとめるプロジェクトが進行中であることによる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まずメニア周辺でこれまで得られてきた成果を相対化するために、南に150キロほど離れたアシュート付近で調査を行ってきているベルリン自由大学のヨヘム・カール博士と比較研究を行う。また、研究成果を国際的に公開するために、アテネのイギリス考古学研究所で開催される第三回日欧古代史研究集会でも、研究成果の一端について報告を行う。さらに、本研究をヘレニズム文明のより包括的な研究に発展させるため、国内外の関係の研究者と連携して、新たな研究計画を策定する。
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