研究課題/領域番号 |
23320131
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中村 和之 函館工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80342434)
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研究分担者 |
酒井 英男 富山大学, その他の研究科, 教授 (30134993)
小林 淳哉 函館工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30205463)
浪川 健治 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (50312781)
佐々木 利和 北海道大学, 学内共同利用施設等, 教授 (80132702)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アイヌ / 交易 / 電磁気調査 / ガラス玉 / 金属製品 / 年代測定 / 成分分析 |
研究概要 |
本研究は、アイヌ文化史の研究の上で、空白の時代といわれている14世紀~16世紀の時期を対象とし、文献史学と考古学ならびに分析諸科学を動員して、研究を進める。アイヌの物質文化については、①地域によって差異があったか、②交易の拡大がアイヌ文化にどのような影響を及ぼしたか、③中世と近世とでアイヌ文化には断絶があったか、以上3点の視点から検討を加える。 平成24年度の調査では、ガラス玉の成分分析について成果があった。12世紀から17世紀における北海道のガラス玉の中に、アルカリガラスが存在することが明らかとなった。平成23年度までの調査では、ほぼ鉛ガラスという結論であったが、必ずしもそうとは言えないことが明らかになった。また、古代の北海道においては、大きく二つの系統のガラス玉が流通していることが明らかとなった。ロシア連邦・ウラジオストクでの調査においても、古代のガラス玉に、北海道と同様の二つの系統の玉を見いだすことができた。古代の環日本海沿岸には、この二つの系統の玉を主体にしたガラス玉の流通圏があった可能性が想定できる。中世のアルカリガラスの産地を特定する上で、手がかりとなる事実と考えられる。 つぎに上ノ国町の勝山館跡の電磁探査では、金属器の反応が顕著なアイヌの墓が集中している地域を絞り込むことができた。また平成25年度に探査する予定の新日高町・伊達市の遺跡の現地調査を行った。さらに、青銅製品や繊維製品あるいは出土銭貨についても、成分分析に着手した。遺物の年代測定も行った。このように平成24年度は前年度に続き、遺跡・遺物の分析の方面で明確な成果をあげることができた。 一方、文献史料の調査については、まだ作業の途中ではあるが、コシャマインの戦いと下北半島での争乱との関係について知見を得ることができた。そのほか、謝遂『職貢図』など、中国の画像資料についての研究にも着手することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガラス玉や金属製品・繊維製品および出土銭貨などの分析や年代測定、遺跡の電磁探査など、遺跡・遺物の分析の方面では顕著な成果をあげることができた。特にガラス玉については、大きく二つの系統のガラス玉が流通していることを明らかにすることができた。次に絵画資料の研究についても、中国の清代の資料の分析で成果をあげることができた。 その一方で、文献史料の方面では松前氏関係の史料の検討を終えたものの、まだ成果には結びついていない。
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今後の研究の推進方策 |
ガラス玉や金属製品などの出土遺物の成分分析について、中間のまとめを行う。またロシアでの資料調査を継続し、現地での出土遺物の成分分析を実施するべく交渉を行う。つぎに、新日高町と伊達市での電磁気調査を実施し、アイヌ系遺物の埋納状況についての見通しを得る。このほかには、絹織物などの繊維製品についての分析を実施する。 あわせて、中世・近世の日本語・漢語・満洲語文献から、アイヌの交易や物質文化についての記録の拾い出しを継続する。
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