研究課題/領域番号 |
23320132
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
村木 二郎 国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (50321542)
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研究分担者 |
齋藤 努 国立歴史民俗博物館, 研究部, 教授 (50205663)
松田 睦彦 国立歴史民族博物館, 研究部, 助教 (40554415)
小野 正敏 人間文化研究機構, 本部, 理事 (00185646)
金沢 陽 (財)出光美術館, 学芸員 (90392886)
福島 金治 愛知学院大学, 文学部, 教授 (70319177)
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キーワード | 技術 / 職人 / 考古学 / 未成品 / 民俗学 / 石切丁場 |
研究概要 |
列島各地の中世遺跡の発掘では、地域、階層の上下を問わず、日常什器として磁器・陶器の碗皿、陶器の甕・壺・擂鉢が出土する。保存条件がよければ漆器がこれに伴う。この12世紀に普遍化する、前代とは大きく異なる「中世的」生活様相の実現(技術・生産流通消費の様相)には、最も基礎的な日常分野であるがゆえに、そこに中世の特質をみることができる。一方、例えば織田信長の安土城築城は、自らの権力・権威を誇示・正当化するモニュメントと位置付けられるが、それを実現した各技術は長く寺院が保持してきた異種技術(集団)を統合したものであった。時代を動かした権力にとって、技術は、経済的権益のみならず、権力自体を表象するものでもあり、そのあり方は時代そのものの変化であったといえる。 こうした視点にもとづき、中世の技術史を、考古、文献、民俗、美術史、分析科学などの多方面から研究するのが目的である。平成23年度は、異分野の研究者が共通の素材を分析していくための素地として、共同で巡見をした。具体的には、平泉では12世紀に限定される中世初頭の技術の諸相を、新潟では北沢遺跡や寺前遺跡のような複合生産遺跡の実態を、輪島では現代の漆職人を通して中世の漆芸を調査した。また、石造物生産の、特に中世の未成品と矢穴技法、それに関わる現代石工の調査を実施して、様々な分野に残る継承された技術の意義を再認識した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共通の素地とする重要な遺跡を順当に調査することができた。それをもとに、来年度は各自の手法での分析を進めることになる。また、とくに重視している石造物生産の分野に関しては、中世の未成品や石切丁場調査のほか、現代石工や古老への聞き取り調査が有効に実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
異分野の研究者によって多角的に中世の技術史を分析することを目的としている。しかし、それぞれがバラバラな資料を対象にしたのでは、研究の寄せ集めに終始してしまう。そのため、本研究では素材は共有することが前提である。考古資料を中心に素材を渉猟しているが、その際にはメンバー全員で調査に当たることにより、良好な資料を見出してくる必要がある。今後も個別調査よりも全体調査を中心に、研究を進めていく。 また、石造物生産の分野で成果が早くも上がりつつある。これについては研究会を開くなどして、広く研究メンバー外にも情報を発信していきたい。
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