研究課題/領域番号 |
23320134
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菊地 大樹 東京大学, 大学院情報学環, 准教授 (80272508)
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研究分担者 |
七海 雅人 東北学院大学, 文学部, 教授 (00405888)
井上 聡 東京大学, 史料編纂所, 助教 (20302656)
佐藤 亜聖 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (40321947)
太田 直之 國學院大學, 人間開発学部, 准教授 (40445458)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 金石文 / 石造物 / 板碑 / 歴史情報資源化 / 歴史叙述 / 中世宗教 / 拓本 / 金石文拓本史料データベース |
研究概要 |
最初に、研究代表者・分担者が今年度の調査研究について、メール等の手段によって打ち合わせを行った。 前年度までの各分担者の蓄積を踏まえて、研究開始時以来一貫した方針にもとづき、拓本サンプルの採集及び立地等の歴史地理情報の蓄積を精力的に進めた。具体的には特に、東日本では青森県・弘前市の文化財担当者と連携して青森県津軽地方の調査を開始し、西日本では徳島県吉野川中流域のサンプル調査及び、大分県全域の悉皆調査(大分県埋蔵文化財センターと連携)を実施した。その際には、引き続きGPSによる位置地点情報を記録したデジタル写真の撮影を行い、データを蓄積した。また、新たに開発した歴史地理情報システムについて、前年度の実験的運用を踏まえて本格的に改良・応用し、公開に成功した。これにより、他の地域史料との重層的関係を明らかにする端緒を開くとともに、空間認識論的な金石文史料の位置づけに関する研究を進めることができた。さらに、良質な金石文史料の集中する宮城県・奈良県・徳島県などにおいて近代以降蓄積された拓本群について、情報カード化・写真・デジタルデータ作成などを通して一点ごとの詳細な調査を進めた。関連して、遺跡・遺物など歴史考古学資料との関係についても研究を進めた。 本研究において当初から改良を進めてきた東京大学史料編纂所金石文拓本データベースを応用し、引き続き史料編纂所に蓄積されてきた金石文拓本史料群についての研究を進めた。特に歴史地理情報システムとの連携が実現したことを受けて、これらの拓本群を利活用した研究を進めた。 4年計画の3年次において、調査研究成果の中間発表および学界からの批判・意見などを取り入れるために、他の研究グループと連携しながら、東京大学―プリンストン大学イニシアティブとも関連して、プリンストン大学において日本金石文の宗教史的応用に関するワークショップを開催し、多数の参加を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、東日本・西日本の金石文集中地域における拓本サンプルの採集を勧めることができた。特に、徳島県下の金石文については、概ね全体像を見渡せる段階に進み、また青森県津軽地方については調査に着手し、自治体の協力のもと具体的な進行計画を企画することができた。拓本所蔵機関の調査については、整理やデータ化が進展し、本研究の終了時にデータベースまたは冊子体の目録等として研究成果を公開する目途を立てる段階に至っている。これらのデータをデータベース化してゆく中で基幹と位置づける東京大学史料編纂所金石文拓本データベースについても、逐次新たな史料情報を追加して順調に発展してきている。また、歴史地理情報システムとの共同開発によるデータベースの高度化に成功し、その成果を公開した。4年次計画の3年目にあたり、現在までに蓄積された研究成果の一部を学界に公表し、調査・研究を深めるとともに、意見・批判などをえて最終的なまとめへの見通しを得るために、東京大学―プリンストン大学イニシアティブにも関連し、プリンストン大学東アジア研究プログラム等と連携して、プリンストン大学においてワークショップを行い、多数の研究者・大学院生の参加を得て多くの有益な視点やアドバイスを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、金石文拓本史料・歴史地理情報のフィールドワークによるサンプル収集を大きな柱の一つにしている、来年度は、さらに連携研究者とも連絡・協力体制を深めながら、フィールド調査を進めてゆく必要がある。また、所蔵機関における拓本調査がかなりの程度進展していることを踏まえ、その成果をデータベースまたは冊子体の目録等の形で公表できるよう最終的な整理段階に入るともに、どのような形が公開にふさわしいかについて、さらに検討を進める。フィールドワークの成果や拓本所蔵機関の調査を受けて、ワークショップにおいて歴史叙述・宗教史研究への応用的活用について研究発表を行い、多くの貴重なアドバイスを得たことを受けて、本年度は最終年度として、さらに積極的に学会等に参加して、各自が研究発表・学術情報交換するとともに、論文執筆等によって成果を総括し発信してゆく。歴史地理情報システムの応用的研究が、金石文拓本データベースとの連携という形で実現したことを受けて、サンプルデータをさらに提供してデータベースとして発展させるとともに、本格的な運用を進め、次なる研究課題の模索へとつなげていきたい。
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