研究課題/領域番号 |
23320139
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
服部 英雄 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (60107521)
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研究分担者 |
五味 文彦 放送大学, 教養学部, 教授 (60011326)
神田 由築 お茶の水女子大学, その他部局等, 教授 (60320925)
高野 信治 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (90179466)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 太鼓 / 夙 / 陰陽師 / 舞村 / 屠殺 / 牛馬 / 馬喰(博労) / 葬送 |
研究実績の概要 |
研究集会を奈良県立同和問題資料センターにて開催し、五味文彦「枕草子にかいまみる差別の世界」、神田由築「近世・近代の九州の役者村」、李由紀「食肉産業の現場をたずねる」、服部「弾左衛門の金」の各報告があった。また大和郡山にて傘下に被差別民衆の旦那寺をもつ本願寺派寺院、また旧遊郭・さらに柳沢文庫を調査、翌日叡尊による非人救済が行われた場所であった和泉国取石宿推定地を調査した。また研究分担者の協力を得て、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が記録を残した芸能村を訪問し、関係者より聞き取り調査を行った。また別に松江市近郊にて現地踏査を行った。また水上生活者の後裔にあたる人々が住む長崎県の海の村にて聞き取りを行った。服部はこの間太鼓胴内墨書銘文の収集を継続し、岩手県盛岡市、一関市などで太鼓店を訪問し、史料を得た。太鼓店以外にも神社所有の破損太鼓の銘文を確認した。また『歴史を歩く・時代を歩く』を刊行し、差別問題に関わる論考(中村久子「ふたつの太鼓」、李由紀「食肉産業の現場を歩く」、服部「聞書集」)を収録した。聞書集の対象地域はいずれも歴史的な差別の問題を内包する地域である。この間地名史料の電算化を進め、収集してきた佐賀県内の通称地名=しこ名(行政地名である小字以外の地名)の地図化による記録作成を行った。小字の内、角川地名辞典が差別地名だと判断して伏せ字にしたものがあるけれど、地名の正しい理解を欠いていることが多かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に調査や研究発表を行ってきているし、史料集や研究報告も着実に刊行した。史料公開をタブーにしてはならず、むしろ公開によって差別を克服するための視点や材料を提供できると考えている。閉塞状況になりがちな差別史研究、賤視問題へのとりくみの方向を把握することができつつある。
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今後の研究の推進方策 |
歴史史料の公開と歴史研究の進展によって、差別を克服しうる正しい歴史認識への材料を提供する。差別されてきた人々・集団がはたしてきた不可欠の役割を明らかにしていく。最終年度となるためこれまで集積してきた成果の公開に力を入れたい。残された課題はあまりに多い。牛馬の最後は斃死牛馬となることが唯一ではなく、馬喰から皮多村への売却によって、屠死する牛馬が多かったと考える。葬送における専門技術集団についても技術職能の問題と、職能集団が置かれた必然性、集団への賤視の問題を分析することが可能である。
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