研究課題/領域番号 |
23320142
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
佐賀 朝 大阪市立大学, 文学研究科, 教授 (40319778)
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研究分担者 |
松井 洋子 東京大学, 史料編纂所, 教授 (00181686)
小野沢 あかね 立教大学, 文学部, 教授 (00276700)
人見 佐知子 甲南大学, 人間科学研究所, 研究員 (00457029)
吉田 伸之 東京大学, 人文社会系研究科, 名誉教授 (40092374)
金 富子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (40558102)
吉田 ゆり子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (50196888)
塚田 孝 大阪市立大学, 文学研究科, 教授 (60126125)
神田 由築 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (60320925)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本史 / ジェンダー |
研究概要 |
2013年度は、東日本部会・西日本部会を各1回、現地調査・研究会(北海道)を1回開催し、個別研究報告のほか、『シリーズ遊廓社会』の書評会をかねた年度総括研究会を東京で開催した。これらの研究会では、共同論文集に関わる研究報告や研究課題の整理を行った。 北海道の現地調査では、幕末期の箱館奉行所文書や開拓使・北海道庁文書を閲覧・撮影し、豊富な史料の存在を確認できたが、当面は幕末~明治初年の遊廓統制関係の主要史料を収集した。札幌の道立文書館所蔵の開拓使及び支所関係の文書が重要であり、薄野遊廓に関する膨大な一次史料のほか、芸娼妓解放令の実施に関わる公文書類も、未検討史料を多く含んでいる。現地研究者との交流においても今後の恒常的な研究交流につながる収穫があった。 遊廓・遊所データベースの構築は、奈良県・滋賀県のデータを標準に各府県のデータ作成を継続している。成果をまとめるには至っていないが、7月に国立公文書館で実施した府県史料の調査成果もふまえ、東京・京都・大阪の三都(三府)を含む主要府県の作業を現在進行中である。最終年度には、当面、簡易版にとどめる府県も含める形で、一通りのデータを完成させる予定である。 2013年度の最大の成果は、共同論文集『シリーズ遊廓社会』1・2を刊行したことである。2巻の刊行が2014年1月とやや遅れたものの、三都と地方都市の遊廓事例を発掘し、遊女の身分的位置、男色や芸者、遊女屋の金融の問題など多様な論点を提起した第1巻、居留地付き遊廓と芸娼妓解放令、地方都市や軍都の遊廓、温泉場や三業地のほか、植民地の遊廓や国際的人身売買問題を論じた第2巻、いずれも、すでに学界で大きな反響を呼びつつある。 以上のように、2013年度は大きな成果が上がった。ただ、データベース構築の遅れは、現在挽回中の状態であるため、最終年度はこれを主要な課題と位置づけ、その完成をはかりたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同論文集である『シリーズ遊廓社会』全2巻を2013年度に刊行することができた。当初予定よりは、やや遅れたものの、内容的にはひじょうに充実したものとなり、すでに書評などでも取り上げられ、関連の企画も準備されるなど、大きな反響を呼んでいる。 北海道の現地調査では大きな成果が上がり、史料所在情報や史料の収集は引き続き前進している。 遊廓データベースについては、2012年度から当初の第一次・第二次両データベースを統合した形で府県単位のデータを構築する方向へ転換し、2013年度に確定した標準データを関係者に明示し、府県単位での作成作業を継続中であるが、まとまった成果にはできていないため、引き続き挽回が課題である。なお、関係の研究者でカバーできない府県については、標準化された簡易版のデータを作成し、当面の研究需要に対応できるスタイルを考え、それに沿って、全国データの構築・整理をはかりつつある。 論文集や研究内容面での成果とデータベース構築作業の状況をふまえ、全体としてはおおむね順調と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な研究活動は、これまでどおりの方針で進めるが、最終年度はデータベース構築に特に力を入れ、データベースに関係して東西の部会やデータベース小研究会を開催する。 研究論文集については、内部の研究者による検討会のほか、外部の評者による書評会を企画し、研究の到達点と課題を整理する。 遊廓データベースについては、現在進行中の研究分担者・連携研究者・研究協力者の共同・分担による府県単位のデータ構築作業を継続する。WEBサイトでの公開など、収集したデータの公開・共有の方法についても検討を進め、最終年度に一定のスタイルを確定し、試行的な公開を目ざす。 現地調査・研究会などを通じて、地域の研究者との交流・連携を海外にも広げ、列島諸地域や東アジアに及ぶ「遊廓社会」史研究のネットワークづくりを進めたい。
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