研究課題/領域番号 |
23320144
|
研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
新井 勝紘 専修大学, 文学部, 教授 (40222707)
|
研究分担者 |
粟津 賢太 南山大学, 南山宗教文化研究所, 研究員 (30558911)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 日本史 / 社会学 / 宗教学 / 戦争 / メディア / 郵便 / 民衆史 / 記憶 |
研究概要 |
今年度は、これまでの研究成果の発表を行った。『専修史学』第53号において「軍事郵便特集」が組まれ、論文3点、史料紹介2点が掲載された。 また、郵便研究の拠点ともいえる逓信総合博物館とも連携し、研究を進めた。8月1日から31日にかけて行われた同館主催の企画展「軍事郵便展―戦地からの便り」では、11日から31日の第二期展示において、これまでに蒐集した軍事郵便関係資料を出展し、その模様は読売新聞(8月29日朝刊)の記事にて紹介された。さらに、同館が戦時下に展示活動で軍事郵便とどのように関わったのかについても調査を行い、その成果が『郵政資料館研究紀要』第4号に掲載された。次に、今年度は以下の調査地にて調査を行った。 1.2012年5月27日~28日 広島調査 広島平和記念資料館においては、当館での戦争展示を見学した。さらに、竹本真希子氏(広島市立大学広島平和研究所専任研究員)による案内のもと、資料館周辺の戦争関連遺跡や記念碑などを調査した。広島市立大学広島平和研究所と広島県立図書館においては、所蔵している軍事郵便関係資料の調査・写真撮影、複写などを行った。さらに、調査後には竹本氏から広島在住の郵便資料収集家である秋信隆氏にコンタクトをとってもらい、秋信氏より貴重な軍事郵便関係資料を寄贈していただいた。 2.2013年3月25日~27日 出雲・松江調査 『戦場ヨリ父ノ便リ』を自費出版にて発行した周藤征一氏を訪問し、同氏が所蔵している軍事郵便関係資料の撮影とあわせて聞き取り調査も行った。硫黄島の戦いで戦死した父の軍事郵便を翻刻し・出版した経緯や動機、さらに慰霊への取り組みなど、同氏の意見も含め貴重な証言を得ることができた。島根県立図書館においては、当館の所蔵する軍事郵便関係文献と資料の複写を行った。また、松江護国神社においては、境内の戦争祈念碑の調査・撮影を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
広島平和研究所、広島県立図書館、出雲の周藤征一氏や島根県立図書館などでの調査によって、中国地方における軍事郵便の実態解明について一定の進度を見た。 さらに、周藤征一氏への聞き取り調査により、次の二点の目的に関して達成したと考えられる。まず、当時の証言や軍事郵便そのものの戦時期の扱われ方を、資料も用いて紹介してもらったことにより、軍事郵便を巡る戦地と銃後の記憶の共有化の一端を伺うことができた。また、戦後に軍事郵便が翻刻・刊行される意味についても、その動機などをインタビューから伺うことができた。 そして、研究成果の発表も活発に行い、『専修史学』第53号において「軍事郵便特集」が組まれたほか、『郵政資料館研究紀要』第4号(2013年3月発行)において軍事郵便関係の論文が掲載された。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度に引き続き、軍事郵便を多数所蔵している博物館や、市民グループ、個人の調査を行う。さらに、これまでに蒐集してきた軍事郵便を解読し、戦地と銃後の戦争体験の共有化に関する分析を行う。また、戦後に軍事郵便が翻刻・刊行されている意味を探るため、軍事郵便を翻刻・刊行した個人および団体の数、所在、刊行物の詳細について調査し、著作者へもコンタクトをとり、聞き取り調査などを行い、軍事郵便を翻刻・刊行した動機を明らかにする。 また、今年度は最終年度でもあるので、これまでの調査研究のまとめに向けて、研究会などを積極的に行う予定である。研究成果を総合的にまとめるための議論を行うほか、軍事郵便を翻刻・刊行した団体や個人を招待し、パネルディスカッションなどを行う。さらに、外部の研究者にも報告を依頼する。
|