研究課題/領域番号 |
23320153
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
奥村 哲 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (80144187)
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研究分担者 |
笹川 裕史 埼玉大学, 教養学部, 教授 (10196149)
蒲 豊彦 京都橘大学, 文学部, 教授 (30233919)
丸田 孝志 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (70299288)
山本 真 筑波大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (20316681)
金野 純 学習院女子大学, 国産文化交流学部, 講師 (80553982)
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キーワード | 基層社会 / 構造的変動 / 総力戦・総動員 / 土地改革 / 大衆運動 / 中華人民共和国 / 集団化 / 比較・連関 |
研究概要 |
我々の当面の課題は、日中戦争から国共内戦を経て、成立した中華人民共和国が社会主義体制に向かうという大きな歴史的大変動を、基層社会に焦点を当て、総力戦による総動員という契機を重視し、東アジア史(とりわけ日本史)との連関・比較の中で構造的に捉え直すことである。従来の研究は明確な方法論を持っていないため、この大変動の表面だけ、しかも一国史的にしか把握できず、その結果、体制転換の根底にあるものや社会主義体制そのものを、グローバルな近現代の歴史の中で捉えることができなかった。この課題に迫るため、研究代表者・分担者・連携者・協力者の各自が、担当する地域を訪れて档案などの史料を収集し、あるいは聴き取りなどをして、各地域の構造的変化の過程を追究する。それをもとに、年4回程度の研究会で共通認識や課題を深め、対外的にはワークショップで問題を提起して議論し、国際シンポジウムで成果の共有をはかっていく。これが我々の計画の基本である。 23年度は各自の史料調査や研究会は比較的順調に行なわれ、共同研究はさらに進展したが、予定していたワークショップは24年度に回さざるを得なかった。ほぼ同じメンバーによる前回の科研費の成果に基づく論文集の準備(24年度刊行予定)に、多大なエネルギーを割いたからである。この論文集の1つの中心テーマは、共産党が農村の基層社会を掌握していく契機になった土地改革で、時期や地域の差異はありながらも、それが何よりも農民を動員するための手段であり、極度の社会的緊張の下で個々人に「敵か味方か」の二者択一を迫り、少数を孤立させることによって、それまで弱かった地縁に基づく組織化を実現していった過程が明確になった。それが共産党にもたらしたのは農民の支持ではなく支配であり、日本の農地改革が農業経済自体の論理や農村社会の自律性に相当程度基づいていたのとは、大きく異なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各自の史料調査や研究会はおおむね順調に行なわれている。ワークショップは1年延期したが、前記の論文集の準備過程で我々の方法論の妥当性がより明確になり、それを基に24年度により問題点を深めるワークショップができそうだからである。論文集自体も24年度に刊行できそうである。台湾史との連携も、関係研究者の海外研修のため23年度はできなかったが、24年度はできると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も各自が担当地域に関する史料収集と分析をして研究会で深め、日本史・台湾史と連携するというやり方は変わらない。ただ将来を見据えて、基層社会の集団化の問題に入ろうとすると、中国の公開度が低いため、史料の収集には困難が増すであろう。档案館の開拓に一層尽力するとともに、中国の研究者にさまざまな形で協力をお願いすることで、困難を克服していきたい。
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