研究課題
中華人民共和国期の檔案はもともと公開度が低いことに加えて、昨今の日中関係の悪化が史料収集の困難をさらに増している。この状況は今年度も改善されなかったため、大陸の檔案館で基層社会に関する檔案を収集することはあまりできなかった。その代わりとなったのが、協力者1名を含む4名が香港中文大学が所蔵している『内部参考』を閲覧したことである。その成果の一部はすでに発表されているが(後述の国際シンポでの金野報告など)、むしろ来年度以降の研究に活かされるであろう。個々人の研究成果については、後の「研究発表」のリストを参照してほしい。研究会では、昨年度末に刊行した共同研究の成果である奥村哲編『変革期の基層社会―総力戦と中国・日本』(創土社、2013年)の公開書評会を開き、阿南友亮氏の報告とともに討論した。また、同氏の著書『中国革命と軍隊』(慶応大学出版会、2012年)も検討した。これらでは特に、欧米や日本とは異なる中国において、「総力戦」・「総動員」あるいは「強制的均質化」などの概念が妥当性や有効性が議論された。もう一つ重要なのは、国際シンポジウム「東アジア史の比較・連関からみた中華人民共和国成立初期の国家・基層社会の構造的変動」(2013年7月7日、筑波大学東京キャンパス)を開催したことである。ここでは大衆運動・動員の捉え方や日中の食糧調達をめぐる問題(統一買付・販売と食管制度)、そして同時期に台湾で実施された農地改革についての報告・討論が行なわれた。東アジア史レベルでの比較・連関という視角からの、かなりかみ合った議論ができたと思う。詳しくは、汲古書院から出された報告集(2014年3月)を参照していただきたい。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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