研究概要 |
研究代表者の松田をはじめとする2010年にモンゴル国で発見した文字資料(ドルノゴビ県エルデネ郡の1058年契丹大字碑文1件,ボルガン県ダシンチレン郡ハルボハ城址遺蹟出土16~17世紀白樺樹皮文書60件)の研究権を有している。本研究は,これらの資料及び関連資料について,その発現・出土状況の確認,保存・修復,内容の解読と歴史的研究を行い、モンゴル史において史料的制約から十分に明らかにされてこなかった二つの時期,すなわち1)チンギスハン登場以前の11~12世紀,2)14世紀後半~17世紀半ばまでの歴史像を再構成することを目的とする。13~14世紀のモンゴル時代史とこれらのその前後期の新出資料の時代との連続性についても比較検討を行うことを目的として研究を推進した。本年度(平成23年4月~平成24年3月31日)の研究実施内容は以下の通り。詳細は、本科研『2011年活動報告』、以下『2011活動報告』に掲載した。まず、5月松川、6月松田はモンゴル国で新たな発掘をオチル・(モンゴル国立遊牧文明研究所)と現地で連携して実施、白樺文書などの新資料を発見した。11月から3月にかけて、2010年と2011年発見の白樺樹皮文書等の資料の保存を(財)元興寺文化財研究所保存科学センターで実施、研究推進の基盤を整備。8月松川は,契丹文字研究者武内康則(日本学術振興会特別研究員,大谷大学)とともに牛根靖裕の補佐で契丹大字碑文のモンゴル歴史博物館にて解読研究を進めた。同月松田、村岡、松川はオチルとともにモンゴル国にて碑文、岩壁銘文資料を調査、写真撮影を行い、資料収集を進めた。1月、松田は、九州鷹島で発見されたモンゴル時代の沈没船の情報を収集した。モンゴル時代史の新出資料情報を収集した。村岡は、モンゴル時代史について検討を進めている。また『2011年活動報告』を編集した。井上は,白樺樹皮文書の保存・保護処理について助言し,文書の解読研究に着手、また中国での同種資料調査を実施し、大阪国際大学での研究会にて報告した。研究協力者のオチル(モンゴル国際遊牧文明研)は,白樺樹皮文書の出土状況を確認し、遺蹟の新発掘を支援。11月来日してモンゴル国での新発見資料について公開講講演会と研究会で報告し、モンゴルでの新発見資料の情報を日本の研究者と共有した。
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