研究課題/領域番号 |
23320160
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松井 康浩 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (70219377)
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研究分担者 |
土屋 好古 日本大学, 文理学部, 教授 (70202182)
池田 嘉郎 東京理科大学, 理学部, 准教授 (80449420)
浅岡 善治 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (80347046)
中地 美枝 北海道大学, スラブ研究センター, 共同研究員 (90567067)
松戸 清裕 北海学園大学, 法学部, 教授 (10295884)
河本 和子 早稲田大学, 政治経済学術院, 助教 (50376399)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 近現代 / 公衆 / 公論 / 市民 / 主体性 / エイジェンシー / 国際研究者交流 / ロシア |
研究概要 |
本研究は、公衆や公論等を概ね含意するロシア語のobshchestvennost'の機能や働きを、19世紀後半から現在に至る各時期の歴史的事象や文脈に照らして検討することで、近現代ロシアにおける公衆/公論の政治的社会的役割を考察するとともに、その中に市民の主体性(agency)を見いだすことを目的としている。 平成24年度は、本研究プロジェクト・メンバー(研究代表者・分担者・協力者)がそれぞれの分担する研究課題を飛躍的に前進させるため、個人の研究作業に集中することとした。そのため、昨年度に引き続き、メンバーの一部はロシアのアーカイヴ調査におもむき、資料基盤の拡大を図った。各自の研究成果を互いに確認する目的で、平成25年3月9日(土)・10日(日)の二日間をかけて福岡で研究会を開き、各自の研究報告と討議を行った。 以上の作業により、19世紀前半に本格的に流通を始めたobshchestvennost'という言葉は、20世紀初頭、とりわけロシア革命前後の自発的な大衆運動が盛り上がりを見せた時期にはその使用頻度が下がり、1920年代に入って、ソヴィエト政権が労働者や農民の自発性を「動員」しようとする文脈で意識的に再定義され、流通度を増したことが確認された。また、スターリン時代には、再度その使用が目立たなくなったが、スターリン死後のフルシチョフ期に、体制が「社会の自治」をスローガンに掲げはじめて以降、公文書やメディアでも頻発されるようになった。その中にあって、1960年代後半以降に活動を活発化させた異論派が、世界の世論に自身の主張を訴えかける際に、obshchestvennost'の用語を政権とは異なる含意で用い始めたことが注目された。 25年度は本研究プロジェクトの最終年度にあたるため、シンポジウムの開催や出版による研究成果発表に向けた今後の活動計画がメンバー間で確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メンバー各自の研究の進捗状況には多少の開きはあるものの、作業が滞っている者はおらず、逆に来年度の作業を先取りして、成果の執筆作業にすでに着手しているメンバーもいる。総じて、本研究は概ね順調に進展しているものと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
全体的にみて、本研究プロジェクトは概ね順調に進捗しているため、最終年度は、その成果を公表する作業に力を注ぐ。平成25年度前半は各自の研究成果の取りまとめ作業をさらに進め、年度の後半にその成果を発表する作業に着手する。具体的には、10月12日(土)13日(日)に開催予定のロシア史研究会大会にパネルを設置し(大会実施委員会に申請中)、メンバーの一部が報告を行う予定である。その際、海外からの招聘研究者を交えてパネルを組むための準備も進めている。また、大会の翌日にも招聘研究者の基調報告に加えてメンバーの成果報告を実施するカンファレンスの開催を計画している。 本研究プロジェクトの最終目標は、研究成果を英語の著作として出版することである。各自の英語論文の草稿提出期限を平成25年12月末に設定しており、その後、メンバー間でのチェックを経て、年度末までに、全ての原稿を取りまとめる計画をたてている。それと並行する形で、海外の出版社との交渉に入りたい。
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