研究課題/領域番号 |
23320165
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
朝治 啓三 関西大学, 文学部, 教授 (70151024)
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研究分担者 |
加藤 玄 日本女子大学, 文学部, 准教授 (00431883)
田口 正樹 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20206931)
渡辺 節夫 青山学院大学, 文学部, 教授 (70036060)
服部 良久 京都大学, 文学研究科, 教授 (80122365)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 帝国 / 王国 / 領邦 / 中世都市共同体 / 帰属心 / 教皇権 |
研究概要 |
6月と12月に研究集会を持ち、研究協力者からの発表をもとに、12,13世紀西欧の帝国的権力構造について討論した。松本涼はアイスランド留学を通じて、サガなどを史料として現地王権が各地の小権力体をどの程度代表し得ていたのかを実証によって示した。そのうえで、地域諸権力の代表者としてのアイスランド王が、遠く離れたノルウェー王に臣従し、それへの帰属心を示したことから、広域的権力構造の成立を説明した。この仮説の従来の歴史像再考への意義について討論した。ノルウェーの帝国的な権力構造について朝治が質問した。一方、小川王紀はカペー家フランス王によるカテドラル建設が持つ、フランス王国の建設への意義について報告した。従来の研究では用いられてこなかった史料を用いて王国権力構造を解明する視角であるため、青谷、渡辺から専門的な質問があった。我々の課題に共通する点があることを確認できた。 これらの研究発表を踏まえて、今後の研究方針を検討した。時代としては11世紀から15世紀まで、対象地域は英独仏とその周辺とする。帝国、王国、領邦、都市、教皇権に分野を分け、全員で分担する。今後2年間に研究分担者と研究協力者全員が研究発表を行い、各自が分担する分野での論文を完成する。これらの研究課題に取り組むことを確認した。 2012年度には9月に朝治が日英歴史家会議で「マシュー・パリスの視角からのプランタジネット時代のガスコーニュ支配」と題する研究発表を、ケムブリジ大学トリニティ・ホールで行った。ディヴィッド・カーペンターとビヨルン・ヴァイラーがコメントした。さらに朝治はヴァイラーを日本へ招聘し、関西大学と京都大学で、皇帝、国王の裁判機能についての講演を2種類行ってもらい、日本側研究者と討論した。 朝治が英国へ出張し、大英図書館、ケムブリジ大学図書館などで史料を転写した。松本は成果をアメリカの中世学会MAPで報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究集団の母体となった「中世英仏関係史研究会」のメンバーによる研究成果である『中世英仏関係史』(創元社)を2012年4月に刊行した。それを用いての各地での講演や授業において読者の反応を検討した。キーワードである帝国的権力構造についての質問が多く寄せられ、まだその理解が読者には十分には浸透してはいないことが分かったが、もっと知りたいという関心の強さをも感じた。これに応えるため、下記のようなシンポジウムを計画した。25年度に実施の予定。 関西大学で行われたビヨルン・ヴァイラー教授の講演には関西大学の教員や院生、学生が多数参加し、活発に質問した。従来の一国完結型の王国史像に対する不満を解消する講演であった。教授の目指す到達目標は我々の研究関心にも共通する。受け入れるだけではなく、海外に発信する行動もとっている。朝治がケムブリッジで英文で報告した。松本がアメリカ、サン・ディエゴ大学で英語で発表した。 このテーマでの原稿執筆依頼を『西洋史学』から受けている。また東北大学の西洋史研究会の年次大会におけるシンポジウムを提案をしたところ、採用された。2013年に実施する予定である。このテーマでの研究のニーズが理解されつつあり、それに応えて、我々も計画をより細かく策定して、順調に進行させているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに研究会で行った個別研究発表で抽出された論点、すなわち、帝国的権力構造が如何に地域小権力体の帰属心を獲得して形成されまた変化していくか、を軸にして、英独仏の各権力と小権力体とが築く権力構造を、個別例で具体的に示すことが次の課題となる。英独仏の周辺や境界領域の権力体もこの帝国的権力構造の一部として把握する。その結果、3つの帝国的権力構造が何時、いかなる状況で形成されたか、それが時間の移行に伴う社会の変化におうじて、どのように構造変化していったか、さらにはそれらの権力構造が社会のニーズに合わなくなっていき、如何にして解体するのかを、歴史的に説明する。これらの課題は地域的にも、時間的にも幅広いので、研究代表者と分担者、および協力者とが分担して研究を進める。すでに過去の研究集会で、役割分担と研究発表順を決めた。 バルバロッサ時代の神聖ローマ帝国の内的権力構造については服部良久、帝国皇帝権力がイタリア、フランドルなど周辺へ及ぼした権力的活動の歴史的意義については田口正樹が担当する。英独関係については朝治啓三が13世紀のシュタウフェン家とプランタジネット家との交渉に焦点を当てて、史料分析をして、従来の一国完結史観とは異なる歴史像の提示を目指す。仏英関係は加藤玄が担当し、プランタジネット家によるガスコーニュ支配の権力装置、インフラについての実証研究を目指す。仏独関係を渡辺節夫が担当し、13世紀のカペー家から見たシュタウフェン家とヴェルフェン家との権力闘争を分析する。
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