1.北海道北見市における擦文文化集落遺跡の発掘調査 擦文文化の集落に関する考古学的データを収集するため、北見市大島2遺跡にて擦文文化集落遺跡の発掘調査を実施した。本遺跡は海に面した高位段丘上という特異な場所に立地しており、河川沿いの低地や砂丘に位置する周囲の集落とは異なる性格を有していたと考えられる重要な遺跡である。昨年度までに1号竪穴と2号竪穴を完掘し、さらに3号竪穴が調査継続中であったが、本年度の調査ではこの3号竪穴について継続調査を実施した。竪穴床面まで完掘していないため成果には未確定の部分があるが、調査の結果、以下のような成果を得た。①竪穴の形状については昨年度に概ね判明していたが、一辺が6m弱の方形で方角は1号・2号竪穴と同じであることを再確認した。②竪穴の南壁に付設されていたカマドの調査を途中までおこない、カマドの煙道が作り替えられている可能性が高いことと、カマドに宇田川編年後期~晩期(12世紀頃)の擦文土器が伴うことを確認した。③竪穴床面上で住居の屋根材等とみられる多数の炭化した木材を検出したが、それらの中には簀の子状の構造を呈するものが認められた。これは床面もしくはそのやや上に設置されたベンチ状の構造物とみられるが、近隣の遺跡では確認例のないやや特異なものであった。 2.研究の総括(研究成果報告書の刊行) 本年度が最終年度であるため、研究成果報告書を刊行して研究全体の総括をおこなった。報告書では発掘調査をおこなった北見市大島2遺跡1号竪穴・2号竪穴について、出土した擦文文化の遺構(竪穴住居跡)・土器・石器・植物種実・炭化材等のそれぞれについて種同定や放射性炭素年代の測定等を含む分析をおこない、特に擦文文化とオホーツク文化の関係などに留意しながら、この遺跡が有する特異性についてまとめた。
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