• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実績報告書

漆製品に使われた漆の産地に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23320167
研究機関東京大学

研究代表者

吉田 邦夫  東京大学, 総合研究博物館, 特招研究員 (10272527)

研究分担者 中井 俊一  東京大学, 地震研究所, 教授 (50188869)
宮腰 哲雄  明治大学, 理工学部, 教授 (00062018)
キーワード同位体分析 / 年代測定 / 産地同定 / 考古学 / 流通経路
研究概要

初年度の研究は、分析方法の確立とその応用の二つの柱で構成することを企図した。
主として現生資料を用いたストロンチウムの動態分析に関しては、大陸の漆液資料の追加分析と、漆塗膜の胎となる物質について分析を行った。韓国、タイ、ベトナムで採取された漆液のSr同位体比を測定した。以前入手したベトナムウルシは、非常に高い87Sr/86Sr比を示したが、今回の測定では、中国産漆と同様の値が得られた。これらは、後述する琉球漆器の制作地、流通を検討する際の基礎データとしても用いられる。また、漆製品において、漆塗膜を胎から分離することが困難な場合があり、これらの不純物が混入したまま同位体比測定が行わざるを得ないことが起きるので、木材、紙、布、粘土、ベンガラなどについてのSr同位体比、濃度を測定し、基礎情報を蓄積した。
縄文漆の産地同定への応用では、鳥浜貝塚をはじめ、縄文時代前期~後晩期、弥生時代の漆製品、漆液、ウルシの木についての同位体分析を行った。特に東京都下宅部遺跡に関して、土壌を含め、詳細な検討を行った。現在、これまでに得られた分析結果について解析を行っており、論文発表を予定している。
一方、中世~近世の琉球漆器の分析を進めている。伝世品と出土遺物についての分析から、琉球列島は複雑な流通ネットワークを形成していることが推測される。琉球列島で栽植されているウルシ、生育土壌の同位体比を分析すると共に、すべての資料について、熱分解GC/MS分析を行い、断面分析、Sr同位体分析を行った。従来は、ウルシオールを主成分とする漆塗膜資料について、同位体分析を実施してきたが、ラッコール、チチオールを有する塗膜についても、その産地を推定するために分析を行うよう方針を変更した。また、漆製品を制作した場所を推定するために、漆が塗られている胎、主として木材の同位体比測定を開始した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

漆塗膜の酸素同位体比を用いて、漆産地を絞り込む試みについて、進展にやや遅れが見られる。しかし、次年度からの分析を予定していた琉球漆器に関する分析、解析が大きく進展しており、全体としておおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

1)縄文時代前期を中心とした漆製品の産地推定、漆液または漆製品が移動した可能性を検討する。2)琉球漆器の分析を進め、大陸、日本列島、南方との交易の実態を解明する。3)アイヌ漆器の分析資料を採取、分析を進める。特に、在外アイヌ関係資料からの試料採取を推進する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Molecular criteria for discriminating museum Asian lacquerware from different vegetal origins by pyrolysis gas chromatography/mass spectrometry2012

    • 著者名/発表者名
      Le Ho,AS, Regert,M, Marescot,O, Duhamel,C, Langlois,J, Miyakoshi,T, Genty,C, Sablier,M
    • 雑誌名

      Analytica Chimica Acta

      巻: 710 ページ: 9-16

    • DOI

      10.1016/j.aca.2011.10.024

    • 査読あり
  • [雑誌論文] オンライン紫外線照射熱分解がガスクロマトグラフィー/質量分析法を用いた生漆塗膜の紫外線劣化に伴う揮発生成物の検出と劣化機構の解析2011

    • 著者名/発表者名
      神谷・武田・渡辺・宮腰
    • 雑誌名

      分析化学

      巻: 60 ページ: 269-274

    • DOI

      10.2116/bunsekikagaku.60.269

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Preparation and characterization of a new lacquer based on blending urushiol with thitsiol2011

    • 著者名/発表者名
      T.Honda, X.Ma, R.Lu, D.Kanamori, T.Mityakoshi
    • 雑誌名

      J. Applied Polymer Science

      巻: 121 ページ: 2734-2742

    • DOI

      10.1002/app.33736

    • 査読あり
  • [学会発表] 漆の産地識別2011

    • 著者名/発表者名
      佐藤正教・中井俊一・吉田邦夫
    • 学会等名
      日本文化財科学会28回大会
    • 発表場所
      筑波大学
    • 年月日
      20110611-20110612
  • [図書] アルケオメトリア-考古遺物と美術工芸品を科学の眼で透かし見る-2012

    • 著者名/発表者名
      吉田 邦夫 編・著
    • 総ページ数
      288
    • 出版者
      東京大学総合研究博物館

URL: 

公開日: 2014-07-24   更新日: 2019-06-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi