研究課題
ストロンチウムSr同位体比を用いて、漆の産地を同定する分析方法を確立した。漆塗膜、漆液、ウルシ、土壌などについて、それぞれ最適な化学的前処理、分析試料の調製、同位体比分析、濃度分析について規格化を行った。ICP-MSを用いているため、分析に必要とする試料量30mg前後が必要であるが、今後、より少量の資料で分析できるようにすることが課題である。また、漆製品は、漆塗膜を胎から分離することが困難な場合があり、これらの不純物が混入したまま同位体比測定を行わざるを得ないことがあるので、木材、紙、布、粘土、ベンガラなどについてのSr同位体比、濃度を測定し、基礎情報を蓄積した。現生試料について、日本列島と中国の主要な漆産地、韓国、タイ、ベトナムで採取された漆液のストロンチウム同位体比、濃度を測定し、基礎情報を蓄積し、ストロンチウムの動態分析を行った。日本列島産と大陸産の漆は、同位体比が異なり、明確に分離できることを明らかにした。すなわち、87Sr/86Sr比が、0.711前後を境にして、列島産の漆は、それより小さな値を示し、大陸産は大きな値を示す。この手法を縄文漆の産地同定へ応用し、鳥浜貝塚をはじめ、縄文時代前期~後晩期、弥生時代の発掘資料について分析を行った。漆液、漆製品が交易・流通している可能性を検討するために、同一遺跡の漆製品、漆液、ウルシ、またはそれに代わる植物遺体、土壌を同時に分析することとした。これまでに得られた結果では、出土遺跡ごとに、ほぼ誤差範囲内の値を示し、交易・流通の跡は認められていない。これらの結果について、論文を作成中であるが、関係諸方面との調整があり、発表できていない。一方、琉球漆器、アイヌ漆器の分析を進め、興味深い知見を得ている。縄文漆、琉球漆器、アイヌ漆器は、顔料分析、熱分解ガスクロマトグラフィ質量分析、クロスセクション分析などを同時に行い、大きな成果を得た。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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