研究課題/領域番号 |
23320168
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
鷹野 光行 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (20143696)
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研究分担者 |
古瀬 奈津子 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (20164551)
新田 栄治 鹿児島大学, 法学部, 教授 (00117532)
中村 直子 鹿児島大学, 埋蔵文化財調査センター, 准教授 (00227919)
森脇 広 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (70200459)
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キーワード | 古代土地利用 / 噴火罹災遺跡 / 発掘調査 |
研究概要 |
2004年から科学研究費の特定領域研究「我が国の火山噴火罹災地における生活・文化環境の復元」の研究を継続して、指宿市の開聞岳噴火で罹災した敷領遺跡をフィールドとして発掘調査を進めてきた。2011年には2008年・9年に調査した中敷領地点での建物跡の検出に続き、もう1軒の建物跡を求めて敷領遺跡十町地点で発掘をした。発掘調査の実施に当たっては指宿市教育委員会・指宿市立考古博物館時遊館COCCOはしむれの協力を得た。この地点はすでにすぐ近くを指宿市教育委員会によって2008年に試掘が行われて畠の畝跡が検出されるとともに、成川式・土師器など多くの土器片が出土しており、周辺に居住域の存在することの示唆を得ている。我々の調査でも明瞭な遺構は得られなかったものの多量の土器片が出土し、同様の可能性を得たといえる。発掘地点は中世以降の撹乱が広く見られ、当初期待した建物跡は検出できず、遺構としてはわずかに樹木の植えられていたであろうと推測できる箇所があったのみである。 また敷領遺跡内の2箇所、十町地点に隣接する空き地(2m×12m)と、敷領団地内の公園用空き地(9m×17m)で鹿児島大学所有の探査機によって地中レーダー探査を実施した。この探査については繰り越し分による経費で実施したが、いずれも明確な遺構は把握できず、前者では平安時代頃には水の流路が想定できる状況、後者は団地造成時の整地作業の確認ができたにとどまった。流路は十町地点の土器片の出土状況とつなげて考えることができるだろう。 発掘調査の報告書はあと2回の発掘調査の結果を待ってまとめて作成する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
874(貞観16)年の開聞岳噴火によって埋没した鹿児島県指宿市・敷領遺跡の発掘調査により、埋没以前の古代地方村落の実態、すなわち生業がどのようなものであったか、また敷領遺跡が揖宿郡衙であり、条里制が施行されていたことを明らかにすることを第1の目的とする。さらに噴火災害に対応して、住民がどのような行動をとったかを明らかにすることを第2の目的とする、として研究を進め、今年度は「第2の目的」について手がけたが、建物跡や生産に関わる遺構は検出できず、また周辺の地中レーダー探査によっても遺構を見つけることができていない。しかし「生活の跡」を想定できる遺物である土器の出土はあるので、これを分析することにより手がかりとして生活の場を考えることを進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
最大の課題は発掘地点の選定である。発掘期間が8月から9月の大学の夏休み期間に限られるため、住宅地の中でその頃畑などで利用されていない空き地を探すのであるが、土地所有者の承諾を得ることに困難をきたした。噴火で罹災した居住地環境を把握するべく建物跡の発掘を目指していたが、有効な発掘地が得られず、また期待していた地点も探査の結果遺構は存在しないことが想定できた。噴火罹災に対する当時の人々の行動を探ることと共に課題としていた土地利用の実態、条里制遺構が確認できるのか否かに視点を移したい。2005年に調査した指宿市土地公社所有地を、2005年とは別の視点から見直し、発掘によって確認していきたい。
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