研究概要 |
本研究は,「雄略朝」期前後の地域社会と人制の実態について,考古学的に究明することを課題とする。 平成23年度は,この課題達成のため,下記の3項目について調査・研究を実施した。 1)5世紀後葉の「雄略朝」期前後の時期を中心として,古墳資料のデータベースの作成を行った。特に,人制に関する基礎資料である埼玉県稲荷山古墳・熊本県江田船山古墳の資料を基準としながら,画文帯神獣鏡などの同型鏡群や鉄製武器・武具類・馬具類などの共伴関係に注目しつつ,共通した内容を持った古墳の資料収集を行った。これにより,当該時期の考古資料を比較していくための基礎資料が得られた。 2)「雄略朝」期と重なる時期の5世紀後葉の築造が想定される,山の神古墳出土資料(福岡県飯塚市所在・九州大学考古学研究室所蔵)の報告書刊行に向けた,遺物の調査を行った。これについては連携研究者とも共同で,遺物の全貌の把握と各種鉄器の実測を行った。これにより,報告書刊行のための基礎を構築することができた。 3)山の神古墳が所在する飯塚市に隣接する福岡県嘉穂郡桂川町の金比羅山古墳の測量調査を実施し,1/100・25cmコンターの平板測量図と電子平板による測量図を作成した。その結果,同古墳が山の神古墳の築造に先行する時期の80m級の前方後円墳であることが確定した。これにより,遠賀川中流域における地域社会の実態解明のための基礎資料を得ることができた。 平成23年度は,特に上記1)に関連して,倭の五王の時代に関するシンポジウムにて,同型鏡群を素材とした研究発表を行い,意見交換を行うことにより,次年度以降の課題をより明確にすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降も,上記1)~3)について継続的に実施していく予定である。3)については,当初は上記の金比羅山古墳以外の古墳についても調査の対象としていたが,地元の桂川町教育委員会とも協議の結果,調査環境の整備状況や金比羅山古墳の重要性などから,平成24年度以降,当面は同古墳の調査に集中することとした。また1)については,各地の古墳出土資料の調査を実施する。2)についても連携研究者と共同で調査を継続し,また研究課題全体についての研究会を実施することにより,最終年度までに研究目的を達成することが十分に可能と判断される。
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