研究課題/領域番号 |
23320171
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
辻田 淳一郎 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (50372751)
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研究分担者 |
宮本 一夫 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (60174207)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 考古学 / 古墳時代 / 倭の五王 / 人制 / 北部九州 / 同型鏡群 / 雄略朝 / 山の神古墳 |
研究概要 |
本研究は,「雄略朝」期前後の地域社会と人制の実態について,考古学的に究明することを課題とする。平成25年度は,この課題達成のため,下記の3項目について調査・研究を実施した。 1) 5世紀後葉の「雄略朝」期前後の時期を中心として,主に銅鏡資料を素材としながら調査と分析を実施した。前年度に引き続き,同型鏡群の集成と実物観察の調査を実施した。また関連資料である和泉市久保惣記念美術館蔵画文帯神獣鏡などの調査を通して,中国南朝鏡の検討を進めた。その成果の一部を論文および口頭発表にて公開した。これにより,当該時期の銅鏡資料を広く比較検討していくための基礎資料が得られた。 2) 「雄略朝」期と重なる5世紀後葉の築造が想定される,山の神古墳出土資料(福岡県飯塚市所在・九州大学考古学研究室所蔵)の報告書刊行に向けた,遺物の調査・実測作業を1年間を通じて継続的に行った。前年度に引き続き,連携研究者とも共同で調査を進め,8月と3月の2回にわたって検討会議を実施し,意見交換を行った。8月には九州国立博物館で関連資料の調査を実施し,3月は,最終年度に開催予定の公開報告会に向けての意見交換を実施した。これにより,最終年度の報告書作成に向けての基本的なデータが得られた。 3) 前年度に引き続き,福岡県桂川町金比羅山古墳について,トレンチによる範囲確認・墳丘築造技術解明のための発掘調査を実施した。その結果,後円部3段・前方部2段で葺き石・埴輪を伴わず,一部の盛り土を除き,大半が地山削り出しによって築造されたことが確認できた。これにより,古墳の規模・形態・築造技術を考える上での基礎資料を得ることができた。 以上を通じて,前年度までの研究をさらに進展させることができ,かつ次年度以降の研究課題をより明確にすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の1)~3)はいずれも平成26年度(最終年度)において研究成果を総括し,報告書を作成する上で不可欠な成果であった。特に2)の山の神古墳出土資料の検討は,連携研究者の協力により前年度より大幅に進展した。また1)~3)のいずれにおいても,相互に密接に連関しつつ進行しており,最終年度の成果の統合のあり方を考える上で非常に重要な成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成26年度も,上記1)~3)について継続的に調査・分析を実施する。1)については,未調査の資料について,悉皆的に各地の博物館・埋蔵文化財センター等の所蔵機関での調査を実施し,成果をまとめる。2)については,山の神古墳出土遺物の実測や製図・写真撮影や理化学的分析を実施する。3)については,金比羅山古墳の地域社会での位置づけを明らかにするため,墳丘形態や時期の解明を目的として引き続き発掘調査を実施する。また最終年度として,連携研究者と共同で研究課題全体に関する公開の報告会を実施する。その上で,研究成果全体を統合した報告書を作成し,広く研究成果を公表する。平成25年度までの進捗状況により,最終年度に研究目的を達成することが十分に可能と判断される。
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